すでに時刻は夜の10時をまわっていた。 20日の夜10時から、車いすバスケ女子予選の日本対メキシコ戦があるというのに遅刻だ。ギリシャのネットカフェにあるパソコンの時計が、きっかり1時間ずれていたのだ。
バスの乗客は私一人。こんな時間からオリンピックスタジアムに向かうやつなんていないよなぁと思いつつ、とりあえず少しでも試合を見たい…という思いで会場に向かった。
出口に向かう人が多いなか、「入口」へと小走りに向かう私。 と、何やらライトもなく夜の闇で薄暗くなった入口で、大会ボランティアの若者達が大騒ぎをしながら、近づく私に手を振っている。
「もう終わりだから来るなってこと?」「私の後ろの誰かに手を振ってるの?」、夜の暗さで彼らの表情も見えない。でも何やら拡声器で「ウェルカ〜ム」と騒いでいる。 よくわからずに、こっちもわざと戻る振りをしてみると、また拡声器で「ノー、ノー、カモ〜ン」。やっぱり私に向かって叫んでたのね。
入口に辿りつくと、大げさなしぐさで入場者数カウントのボタンを押すボランティア。「カチ」っとカウントされると、「コングラッチュレーション!!!」
さらになおしきりと「女子バスケを見にきたんだよな?」と聞いてくる。 「イエス」と答えると、また歓声。 「コングラッチュレーション」と言われながら、ポテトチップを口に入れてもらったが、まったく事情がわからず頭の中は?????。
そんなオロオロしている私を、ひとり冷静なボランティアのおばちゃんは、何やら「あんたたち、この人バスケを見にきたんじゃないかもよ」みたいなことを若者たちに言っているふうだったが、若いボランティアの兄ちゃん、姉ちゃんはお構いなし。 さらに何度も私に「バスケットボール?」と聞きながら、ポテトチップで口いっぱいの私がうなずくのを、拡声器で「コングラッチュレーション」と叫びながら会場入口ドアまで引っ張っていった。
会場に入ってみると、試合は第2クォーター途中。同点の接戦だった。 間に合ってよかった! そして第2クォーター終了後のハーフタイム中、くばられた前半の結果を見て思わず笑った。「観客数500人」。
どうやら入口ボランティアは、500人目の観客として私を祝ってくれていたのだ。
ようやく納得し、陽気な彼らを思い出しては笑みがこぼれた。試合は日本がきっかり最後は大差をつけて、アテネ初勝利!
祝・車いすバスケ女子、アテネ初勝利! 祝・500人目の観客の私! こんな幸せ気分な日もある。これがアテネ。
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