午後8時20分。会場からウェーブが起こる。カウントダウンが始まる。アテネパラリンピックの開会だ。
オリンピックスタジアムの中心に植えられた大きな木が光を放つ。この木が今回の演出の中心になった。白い霧が立ち、風に揺れる。木を囲んだ子どもたちが光の球をアテネの空に両手で掲げ、席をほとんど埋めた観客とメディアのカメラのフラッシュが百花繚乱に咲き乱れる。
開催国ギリシャを先頭に参加136国の代表選手が行進。グレーのジャケットに身を包んだイラク選手団が現れると会場は大歓声に包まれた。ギリシャを上回る大歓声にこたえ旗手アリ・ハサンデラ選手を先頭とした選手団は手を高く振って堂々と行進した。長い五輪の歴史のなかで最もテロが警戒された今回のオリンピック期間を経てパラリンピック大会へ。母国はまだ平和とはいえないが、彼らのパフォーマンスは平和への願いそのもののように感じた。
次に観客の支持を受けたのはオーストラリアか。大所帯の選手団には、義足でピョンピョン跳ねるように歩く選手、顔面全体に国旗を塗ったフェイスペインティングで身を乗り出す選手。ビーチボールを投げる選手、チームメイトを肩車して歩く選手、オートバイのような乗り物で移動する選手。パラリンピック代表選手は個性派集団といえるのかもしれない。一歩一歩自分のペースで歩く選手たちの姿に胸があたたかくなった。
国と国との行進に間隔があいてしまったり、他国の選手と写真を撮るなどの交流あるのはパラリンピック開会式ならでは光景だ。クライマックスの聖火点火まで会場にはゆったりとした時間が流れた。 【瀬長あすか】
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