水泳教室の取材で、はじめて、舞阪をおとずれた。河合純一の映画「夢おいかけて」の舞台になった静岡県の漁師町だ。 この日は、きびしい練習の合間のレクリエーション。母校であり、職場であるという舞阪中学のプールで開かれる、水泳教室での河合さんを見る予定だった。 現地で、焼津にすむ大石カメラマンと待ち合わせ。大石さんは地元静岡を中心に取材を始めようとしているパラフォトのメンバーです。(静岡のみなさん、よろしくね。)
雲の多い日だったが、雨は降りそうにない。東海道線の舞阪駅は、花博のお客でにぎわっていたが、南の出口へおりていくのは私だけだった。駅をおりるとすぐに閑静な家並みがつづいて、その通り端では暑さのため地元の方がワンちゃんと一緒に日陰でお昼寝をしていた。初めて選手の地元をたずねること、一緒に取材するカメラマンに初めて会うことで、少し緊張気味だったけれど、そんな舞阪ののどかな町の様子に緊張もとけてすっかりリラックスした気分になった。 駅前の酒屋で「舞阪中学はどっちですか?」と、だいたいの方角を聞く。「ずっと南のほう」「ゆっくり行っても20分だよ」という言葉を信じて、歩いていく。タクシーにのればすぐだが、せっかく選手の郷里に来たのだから、景色をみてみよう。と、てくてくあるいた。
松並木を通り抜け、路地をちょと南のほうへはいったところ。工場のような建物のトタンの壁に色あせた看板が張ってある。そのうちの一つに「うなぎバーベキュー」なるタイプフェイスを見つけた。わたしははじめて聞いた言葉だが、静岡じゃふつうなんだろうか。とその場じゃ勝手に納得したのだが、気になっていたのであとで大石さんに聞いてみると、知らなかったという。 駅から舞阪中学まで私は早足で35分かかった。カメ足なのだ。あとでこの付近がウミガメの産卵地であることを聞いて舞阪の地に親しみを感じた。
帰りは、大石さんの車で弁天島のほうを回って、きれいな夕焼けの海にかかる大きな白い橋を見たり、映画の中にでてきた船着き場ちかくの小さな橋の上をとおったりして、ほんの少し、映画を思い出した。のどかな、映画であるはずなのだけれども、最後に幕を引いたのは、実物の河合さんだった、というストーリーを思い出すと、あのドキュメンタリー映画がなつかしくなる。
【8月7日/佐々木のぶえ】
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