9月24日、オリンピック・テニスセンター、第3コートで車いすテニス男子ダブルス、準決勝が行われた。この試合に勝てば、車いすテニスのパラリンピックでの初のメダル獲得となる。 試合序盤は、斎田悟司も国枝慎吾も気持ちが高ぶり、冷静さを欠いているようにも見えた。エースを狙って激しく攻め続けても、最後のポイントをデビッド・ホール/アンソニー・ボナクルソ組に奪わる。 斎田・国枝組が第1シードとはいえ、相手ペアは世界ランキングbQのデビッド・ホール(オーストラリア)だ。ボナクルソが、予想以上にいい出来だった。斎田も国枝のエース級のショットを、ボナクルソに執拗に拾われ根負けして甘くなったボールを、ホールに打ち込まれるという展開が続く。
しかし、2ndセットに入って、斎田が冷静さを取り戻した。1stセットでは、速いボールで早めにポイントを奪いにいこうとして、逆に切り返しのショットでポイントを奪われた。 ホール/ボナクルソ組のペースにのまれないために、斎田は、自分たちの攻撃パターンに変更した。粘って、エース級のボールを相手が拾えば、自分たちはそれ以上に拾い、そして攻撃の手は緩めない。テニスの技術やレベルは、問題ではなかった。
斎田/国枝組がマッチポイントを迎えても、ホールが最後のポイントを奪わせてくれない。「後1ゲーム取れば勝てる」という、斎田/国枝組の気力を奪うように、ホールは攻撃の手を緩めない。長期間bPに君臨していたホールの強さの片鱗を垣間見せるプレーだった。 オリンピック・テニスセンターの第3コートは、観客の声援に包まれていた。日本の観客もオーストラリアの観客も、どちらも自分の国のペアが勝つことを信じて疑わなかった。選手、観客を含めた会場全体が、同じボールを追いかけていた。 最後はボナクルソのミスで、長い激闘にようやく終止符が打たれた。その瞬間、斎田と国枝はラケットを投げて喜びを爆発させた。斎田の顔には笑顔がもれ、国枝の目には安堵の涙が光った。 アテネでは、メダルを取ることが目的ではない。目的は、あくまでも「金メダルを取ること」だ。これで終わったわけではない。 「やるからには“金”を狙います」(斎田) コートを走り回って、動きの中でポイントを採っていくスタイルを貫けば、勝利はおのずとやってくる。
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/ BBS
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