Paraphoto 特定非営利活動法人 国際障害者スポーツ写真連絡協議会

9月29日 (17:28)

Paraphoto Article

British star, Tanni

大学院生・Nobuko TANAKA

photoタニ・グレイ−トンプソン。イギリスでパラリンピアンといえば、彼女の名前を真っ先にあげるであろうシンボル的存在。それもそのはず、ソウルから数え今回で5大会連続出場(陸上トラック競技)。メダルの数も今回で16個となった。「パラリンピックはオリンピックよりも出場しやすくメダルも獲得しやすい」という声も一部あろう。しかし、5大会メダルを取り続けることは、並大抵のことではない。今回も、金メダル獲得2個という夢を見事に達成した。しかし、コーチでありご主人であるイアン・トンプソン氏は、400決勝レース後、歓喜きわまるタニ選手を見ながら「800と100はいけると思っていた。800が取れていなかっただけに、400を取れたことは、正直予定外でもあった」と語る。タニ選手も「こんなに感傷的になったレースは初めて。レース後(400m)涙が止まらなかった。800でつまづいた後の100でメダルを取れたことが、今レースにつながった」と振り返る。

現在タニ選手は、イアンコーチ以外、もうひとりオーストラリアの、車椅子レースの最も優秀なコーチと評されるジェニ・バンクスにも指導を受けている。「二人コーチを持つなんてなんていう人もいるけど、今の私にはふたりとも必要なの」と語る。特に英語圏のトップ選手には、このように自身のコーチを海外におき、メイルなどで指導を受ける場合が健常者の選手同様増えている傾向にあるようだ。また、コーチと選手が夫婦関係になる場合は、近年珍しいことではない。タニ選手は「(イアンコーチに)指摘されることが余りにも図星だと、たまに素直に聞けないこともあって」とはにかみながら話す。ジェニコーチは、客観的に、そして選手を心理面でもサポートするという意味で、二人は全く違う要素を持ち、それがうまくかみあっているという。

タニ選手は、UKスポーツ(イギリス政府の外郭団体で、主にトップアスリートを支援する組織)の評議委員も務める。「イギリスは、トップ選手に対する支援はとてもいい。例えば、怪我をしないためのスポーツマッサージを受ける費用なども出るから。一方で、次の選手を育てる社会構図にはまだまだ問題点がある」。また、「障害を持つ選手は自身の才能の目が出るまで、また競技をこなすのに時間がかかることもあり、熟年選手のほうが力を出しやすいこともあると思う」とタニ選手は指摘する。現在35歳。2歳になる子供の母親でもある。「2008年の北京パラリンピックでも競技するのか?」などの質問が記者会見でも飛び交っていた。「まだ考えてはいない」とは述べながらも、「まだ世界のトップでいられる自負はある」ともタニ選手は語る。競技スポーツ選手としても、またひとりの妻・母親としても、そしてイギリスの障害者スポーツをリーダーとしても、輝きを増すタニ選手。

400m決勝レース後終了後、ご主人であるイアンコーチに「彼女(タニ選手)をとても誇りに思うっているでしょうね」と訪ねると、左胸を右手で押さえ大きくうなずいていた。タニ選手の強さは、大きな愛情、イギリスの競技選手のサポートシステム、両コーチとの信頼感、そして本人の意思の強さの産物であるといえよう。

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