9月21日 (01:03) |
●Paraphoto ArticleCP サッカー Oh My God !ジャーナリスト・平野誠樹 |
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私は確かにそのグラウンドに、敵を完膚なきまで叩き潰す無敵艦隊の姿を見た。その正体は昨年アルゼンチンで開かれた世界選手権を制圧した、CPサッカー代表のウクライナである。対戦相手のアイルランドには悪いが、大人と子供ほどの差があったように感じられた。おおよそ障害者スポーツとは思えないほど、激しく熱いバトル。実際に見るまでは普通のサッカーと比べてしまって、気持ちが冷めてしまうかもと多少不安だったのだが、そんな心配は一瞬にして消えうせた。 パラリンピックCPサッカーには、8ヶ国が参加する。 <ウクライナ対アイルランド 6:0> この選手は本当によくサッカーを知っていると思った。対戦相手のアイルランドが長身のワントップのFWにボールを放り込んでくる、単調な攻撃なスタイルのチームだとみるや、もう1枚のディフェンスを残して、自分は意図的に前線に上がりチームの攻撃の軸となり怒とうの攻めに転じる。これができるのはもちろん1人1人の技術、身体能力が高いこと、そして組織プレーが徹底されていないとできない。しかしDUTKO選手の個人の冷静な状況判断があってこそできる戦術である。その上先制点、3点目の中押し点とどちらもポイントとなる貴重な得点をあげているのだから脱帽だ。後半ウクライナは余裕があるためか、前半の3トップからDUTKO選手を前線に1人置いたワントップの戦略に変えてきた。さすが世界チャンピオンだけはある。各選手がポジションチェンジを多用できるほどの技術、タレント性をもっているからこそできる芸当だ。そして極めつけは選手層の厚さである。3人選手を代えたのに関わらず、ほとんどバランスの崩れることない安定したパフォーマンスをチームとして見せてくれた。後半も2点追加点を奪い、6対0の圧勝。ただただウクライナの強さだけが目立つ試合だった。今後もDUTKO Tarasから目が離せない。 <ロシア対オランダ 7:1> 私が1番感嘆したのが、彼のエゴイスティックなまでのゴールへの姿勢である。ボールを受ける前にゴールへのイメージが出来上がっているように思える。スペースがあればそこに動き出し、自然とそこに味方からのパスが出る。チームメートですら感じる彼のオーラが、何かやってくれるという期待感を持たせるのかもしれない。ボールを得るとまるでカミソリで地面を切り裂くような鋭くえげつないドリブルを仕掛けてくる。勢いに乗るともはや手の施しようがない。目の前にいる相手選手を完全無視するかのように、一瞬にして置き去りにしてしまうのだ。見ているこちらもワクワクとしてくる胸の高鳴りを抑えられない。これだけのものを見せつけられてしまうと、人間は欲深いもので次はもっともっとと過剰に期待してしまう。これからもTCHESMINE選手の限りない可能性を感じさせてくれるパフォーマンスに一喜一憂したい。 記事に関するご意見・感想はこちらへ → info@paraphoto.org / BBS |