カメラを切る音で、自分の体に緊張が走る。その音が会場全体に響き渡っているように聞こえる。静寂。会場は誰も動くこともできない。響き渡るのはボールから発せられる金属音と選手の雄叫び。選手の靴がコートに擦れる音。そして、自分のシャッター音。その音は選手までは届いてない。ただ、カメラを持つ手が強張ってしまう。
はじめてのゴールボール。 静寂の中で、選手の手から高速で離れるボール。その音を聞けただけで「このスポーツは面白い」と感じた。ルールは簡単。18メートル離れた相手のゴールにボールを投げ入れる。そして敵が自陣のゴール目掛けて投げてくるボールを弾き出す。
ボールは常に床を転がり続ける。「ボールを寝転がんで取るだけだろ」とは思ってはいけない。視覚に頼らずに全神経を音だけに集中しなくてはいけないため、選手は試合後に汗だくになる。確かに運動量は少ないかもしれないが、心理的な駆け引きも含めて、選手は試合後には疲れきった顔をしている。その姿は3対3の決闘。まるで刀を持って対峙している二人の侍。
(あと、突然私事で恐縮ですが・・)中学時代、私はサッカーのキーパーをやってました。同じようにサッカーやハンドボールのキーパーをやっていた人は同じ感想を持つんじゃないかなぁ。このスポーツはいつもは脇役でしかないキーパーが主役!相手から投げられたボールを横っ飛びで跳ね返す。その快感を知っている者は見てるだけじゃなくてぜったいやってみたくなる。
自分は今日始めて見た。日本にいた頃はその名前くらいしかしらなかったし、自分のまわりもまだ知っている人が少ないスポーツ。でもこれからもっと普及していく可能性のあるスポーツだと思う。このスポーツに視覚の障害のハンデはない。目隠しをすれば健常者も障害者も誰でも一緒にプレーすることができる。大人と小さな子供とでもプレーできる。
今日の試合が終わった後に、日本の選手が「今日の勝利でもっと日本の皆がゴールボールを好きになってほしいですね」と語っていた。そして写真を撮っていた私に「テレビや写真で日本のみんなに面白さを伝えてくださいね!」と言ってくれた。まずは帰ってから自分がやってみよう。見るのも楽しいし、やってみるともっと楽しそう。 ゴールボールの楽しさが開花した瞬間に立ち会えたことがとてもう れしい。
試合レポート・ギリシャ‐日本戦 写真 明日追加
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