パラフォトニュース
記事掲載日:2003/11/15

全日本卓球チーム監督・柴田幸男氏(再)_007

卓球・勝つためのスタイル
〜競技卓球としてこだわるところは、勝つことである〜



※卓球の柴田監督は、知的障害クラスも含めて日本チームの指導を行っている。
ここでは、知的障害クラス以外の選手たちが、今大会苦戦している理由を探るため、
監督に聞いた話を紹介する。



競技卓球としてこだわるところは、勝つことである
(全日本卓球チーム監督・柴田幸男監督)


 卓球の選手に話を聞いていると、よく”柴田先生”という名前が出てくる。卓球全日本チームに新しい風を吹き込みつつある、柴田幸男監督のことだ。現在、仙台市の東北福祉大学の教授であり、大学で学生たちに指導を行う傍ら、日本卓球協会理事・日本障害者卓球連盟理事長などを務めている。自身も競技者であり、学生卓球や障害者卓球を長い間見てきている。選手は監督としてだけでなく、「障害者卓球の指導者」として、彼に厚い信頼を寄せている。
 
 柴田監督がこだわっているのは、”勝つこと”だ。彼は話す。
「選手に障害者としてのアドバイスはしない。僕は彼らの障害は個性だと思っている。できることをやればいいんです。でも、彼らは健常者の卓球をしようとしているんですよ。だから、僕はこう言うんです。『普通の卓球はするな、そんな価値観は捨てろ』とね」

 勝負という非日常の世界で、勝つためにはどうしたらよいか。それは、自分の卓球スタイルを見つけてモノにしていくことが基本であって、決して普通の卓球をすることではないと、彼は言う。ここで彼が言う「普通の卓球」とは、健常の卓球のことである。障害が比較的軽く、コートのなかをある程度動くことができるクラスの選手ほど、健常の卓球選手を手本にしてしまうそうだが、何らかの障害でそれがどうしてもできないから、「やっぱりできないのか」と、ジレンマに陥ってしまうのだという。そもそもそれが間違いであって、今の自分のスタイルでできる自分だけの卓球をしていくことが、勝利者となる条件だと説く。

 「健常の卓球では、足りないものやウィークポイントを補うには、練習量や技術に依存するでしょう。でも僕たちの卓球は、それは”知恵と戦術”なんですよ。たとえば、手首が動かなければラケットに固定するし、ラバーにも変化をつける。腕が振れなくてドライブしか打てないならドライブの球種を増やせばいいんです。それは、個性に合ったものでいいんです。なんでもかんでもやろうとする必要は無いんですよ、勝つためには」

 もちろんこれまでも選手自身、勝負にこだわっていなかったわけではないし、全く自分のスタイルを見つけられなかったわけではない。だが、勝てなかった。その戦い方が合っていなかったということだ。彼らは、その違いを感じていたのだろうが、出口のないトンネルのように、進むべき方向性がどうしても見つけられなかった。だが、「自分たちの卓球を」と意識の改革をしようとする柴田監督の言葉の後ろに、選手自身ようやく出口を見つけることができるのではないだろうか。

 
(記事:荒木 美晴 )


※この記事は、2002年10月30日のFESPICのコンテンツより再掲載しています。

トップに戻る | 記事一覧に戻る | 記事目次に戻る

現在の位置:ホーム記事目次101人インタビュー > 全日本卓球チーム監督・柴田幸男氏(再)_007