クロカンの隠れた魅力
1月10日、この日の取材先は日本体育大学にある「レクリエーション学研究室」。ここの専任講師であり、日本障害者スキー連盟の事務局をされている野村一路さんにお話を聞いた。
ここを訪れた目的は、パラフォト展の後援と学生ボランティアのお願いだったはず。しかしいつの間にやら話がふくらみ、障害者XCスキーの魅力やノルディック日本代表の特徴、そして先生が研究されている「あそび」と「スポーツ」との関係にまで進んでいった。
― 僕たち、1月5日と6日にSFL-Jへ行って、障害者のクロカンをはじめて見てきたんです。
ああ、そうなんだ。じゃあ望月さんの頭の中には、ブラインド(視覚障害者)スキーのイメージが強いんだね。
― ええ、今のところは・・・
でもね、SFL-Jと実際の競技とは全然違うからね。いろんな選手がいますし。シットスキーもあれば、バイアスロンもありますから。
― そうですね。その辺も勉強しなくちゃと思っています。
特にバイアスロンはね、日本では銃刀法の関係で、試合はおろか練習も満足にできないんです。今回のジャパラ(ジャパン・パラリンピック)にも、バイアスロンはありません。でも、長野パラリンピックでの日本選手金メダル第1号は、小林深雪選手のバイアスロンだからね。その辺も面白いと思うよ。
― XCスキーの魅力って何ですか?
ブラインドに限っていえば、やはりガイドと選手とのコミュニケーションには、悲喜こもごもありますよ。でもね、スキーヤーが本当にガイドの声だけを頼りにしているのかっていうと、違うと思うんだよね。実際は、僕らが使い切れていないいろんな感覚があるんじゃないか。いわゆる「足うらの感覚」って言うやつ。
― 「障害=マイナス」と考えている人には分からない感覚なんでしょうね。
そうそう。その辺は障害のあるなしは関係ないわけ。そんな感覚をフル稼働させないと、世界では戦えないんですよ。
― 滑り以外では?
僕個人の意見だけど、XCスキーの隠れた魅力は、夜中のワックスルームにあったりするんだ。どんなに滑りの技術があっても、ワックスが滑らなかったらおしまいだからね。スタッフは、天気予報とにらめっこしながら、いくつも重ねて塗っていくんです。「これが取れるころ、こっちが効き出す・・・」なんて予想しながら。これは極秘中の極秘ですよ。
― なるほど・・・。ところで、パラリンピックに対する注目度は、4年前の長野大会で一気に高まったと思うんですが、その後はどうですか?
う〜ん・・・、注目度が高まったというか・・・「理解者」は増えたよね。長野のときは、地元開催だからお金も出たし、遠征や合宿にも行けたけど、それ以前は(遠征や合宿が)あってないようなものだったから。
― じゃあ、長野はホームグランドでしたけど、今度はアウェーですね。
そうそう。ここで実力を発揮できたら本物だよね。
(取材:望月浩平)
※この記事は、2002年1月10日に取材されたものです。
ソルトレークパラリンピック大学生チームの「追い風」より再掲載しています。
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