パラフォトニュース
記事掲載日:2004/10/06

パラリンピアンズ通信 (3)  水泳

〜水泳めざせ!最高のパフォーマンスを〜


4年前の2000年、初めて水泳競技でシドニーパラリンピックに出場しました。
国際大会は2度目、しかしパラリンピックと普通の国際大会では生活面において、かなりの違いがあります。

普通の国際大会の宿舎は最寄りのホテルでの滞在です。しかしパラリンピックは一般の町とは隔離された選手村内に宿舎があります。「選手村」ノネーミング通りひとつの町になっており移動にはバスが巡回し、生活に必要な医療、理美容、ミニショップ、そして村内に大きな食堂が数箇所あって24時間好きなときに食事を取ることができます。食堂では、お金を払う必要はありません。例えて言えば、国際空港で出国手続きを済ませた後の閉鎖された空間のようでした。その空間で約3週間過ごすことになります。
村内からの外出もインターナショナルゾーンという関門(外部への出入り口)があり厳重にセキュリティがされています。競技会場と観客席もIDカードがなければ家族や友達と行き来することができません。
試合は予選・決勝があり、朝9:00?夜10:00ごろまで開催されます。日本の試合では殆ど経験したことがない、「予選」というものに戸惑いを感じ、リズムが違いました。そんな中、数え切れないストレスをも消化し積み重ねてきたトレーニングの集大成を発揮しなければなりませんでした。
水泳会場に行くと、普段私たち障害者が経験したことのない観客の多さです。国境を越え、会場のいっぱいの応援団は選手に最高のパフォーマンスを見せて欲しいと期待していることを感じさせます。そんな期待に応えなければというプレッシャーを起爆剤にメンタル面をコントロールしなければなりません。

今回のアテネパラリンピック水泳競技には24名の選手が選考されています。そのうち初めて参加する選手が12名。選手村での移動や、言葉のバリアとすべて始めての生活だと思います。選手それぞれが自分の試合のことに精一杯で、パラリンピック経験者は初めて参加する選手にその体験談を語り、メンタル面をサポートする余裕はないでしょう。
競技会場はオリンピックと違い、屋内のサブプールが競技会場になります。屋外のメインプールがウォームアッププールになると聞いています。視覚障害の選手は、毎年夏に屋外で合宿をされているのであまり心配はないですが、肢体障害の選手は殆どが屋外での経験がないのではと思います。アテネは暑いと聞いているので気候の違いや紫外線によるダメージが心配です。
私は8月に紫外線の強いグアムで2週間の合宿をして、体力の消耗を上手くコントロールする術を学習しました。そのような経験のある選手は少ないのではないかと心配です。
今回の選手は、10代の方も多く、普段の生活とはまったく違うところで、体力やメンタル面のコントロールが上手くできるかということも試合結果に反映されるでしょう。厳しい環境の中、最良のコンディションで試合に挑むためには、選手個人の障害の状態や個性に応じたスタッフによるケアも重要だと思います。

障害のクラス分けについて、IPC(国際パラリンピック委員会)からの再チェックを求められることがあると聞いています。選手は精一杯与えられた障害クラスで競技をしているのですが、その与えられたクラスが変わると明暗を分けてしまう結果になりかねません。そんな不安もプレッシャーになりかねません。
私の中でメダルが期待できる選手の予想として、気候と環境に順応できれば、個人で河合純一さん、酒井喜和さん、成田真由美さん、梶原紀子さん、花田裕次さん、秋山里奈さんの6人、上位入賞が8人、団体で期待できるメダルは3つ、世界新が5つでしょう。

障害者スポーツの最高峰の競技大会「パラリンピック」でそれぞれの選手が日々のトレーニングの成果を最高のパフォーマンスとして発揮できることを期待しています。



加藤 作子


【このコラムは日本パラリンピアンズ協会により寄稿されました。】

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