1984年のパラリンピックの時にはレース用車椅子(以後レーサーと呼ぶ)のホイルベースはルールで1200mmと決まっていた。しかし、この長さだと外国人の大きな体では絶対的に不利と言うことで、それ以後ホイルベース・全長には長さの規定が取っ払われた。また、ルール改正によりダンパーシリンダーやブレーキが取り付けられることにより、レーサーの形状が大きく変わり、大会事に記録はどんどん更新されるようになった。車輪もスポークからカーボンホイルに変わり、レーサー本体の材質も超軽量アルミ合金やチタンになり早く走るための空力も考えられるようになった。
しかし、レーサーの全長が長くなることでロード・トラックレースでのクラッシュも増えてきた。一台のレーサーの進路が不安定になるとその長さが故に他の選手も巻き込んでしまう為だ。その処置としてトラックレースのオープンレーン、例えば1500m以上のレースでは、1レース15人から12人に減らされた。
1992年バルセロナ大会5000m予選ではまだこのルールが適用される前だったので15人が参加したが、スイスの選手が逃げてそれを一斉に後続の選手が追っかけた瞬間10人の選手がクラッシュ。結果、トップで逃げた選手と、そのクラッシュに巻き込まれなかった遅い選手がその予選を通過すると言うレースもあった。
車椅子の陸上レースの醍醐味はなんといってもそのスピードである。レース中のトップスピードは時速40km以上でている。現在1500mの世界記録は2分代後半で、そのタイムがいかに速いかを説明すると、先日行われたアテネオリンピックの400m?4のマイルリレーでアメリカが優勝したが、その時のタイムとほぼ同じである。一般と車椅子の世界記録を比べると100mや200mなどの短距離では一般のほうが早いが、400mで並び800m以上では車椅子の記録が上回っている。
フルマラソン(42.195km)ではボストンで大会記録として1時間12分という記録で走っている。
今回の日本選手でメダルに近いのは、やはり畑中選手のマラソン、土田選手のトラック中・長距離であろう。この2名は世界でもトップクラスのスピードと持久を持っている。また、男子では廣道選手の800mだ。天性のレース展開の上手さでシドニーの銀メダルを上回ることができるであろうか?それと、安岡選手の参加全種目メダル獲得なるか?彼のパワーウエイトレシオはおそらく世界一。さらに、楽しみなのが男子400m?4のリレーである。前回シドニー大会ではタイムこそ決勝に残るはずだったが、コースアウトで失格となっている為リベンジという気持ちが選手にはかなりあるはずだ。
3大会連続出場の荒井選手の100mは金メダルの可能性が高い。また、要田選手も200・400mでメダル獲得のチャンスがあるはず!いずれにしても、日ごろの練習の成果を出すのは今このときである。がんばれニッポン!
日本身体障害者陸上競技連盟理事
NPOバラエティクラブ代表理事
千葉 雅昭
【このコラムは日本パラリンピアンズ協会により寄稿されました。】