9月7日午後6時過ぎ(現地時間)、リオ中心部に位置するマラカナン競技場でリオ2016パラリンピックの開会式が開催された。
南米でパラリンピックが開催されるのは今回が初めて。
リオパラリンピックには159の国と地域、その他に難民選手団が参加し、10日間かけて22種目が行われる。
日本からは132名の代表が参加し、17種目に出場する予定。
第一幕、式の序盤には、会場のカウントダウンとともに車椅子に乗ったアレン・ウィールズがジャンプ台の上から高速で駆け下り、見事にジャンプ。同時に花火が空高く打ち上げられ、会場は大声援に包まれた。
ウィールズは、二分脊椎症の障害をもつ。「車いすを医療の道具とみない」というコンセプトのもと、これまで「一番イケてる革新的な車いすの設計」を目指してきた。今回のパフォーマンスでも、「車輪があったら楽しくないわけない!」という彼の言葉通りの、車いすの新たな可能性を追い求める姿勢が見られた。
第2幕は、7歳のペドリンホ・デ・セリンハブによる、新しいサンバの時代を表現するダンスで始まった。ステージ中央では、車輪の形に並べられた椅子にブラジルを代表するシンガーやミュージシャンが座り、歌や演奏を通してブラジルの音楽文化を紹介した。2部では車輪を、「人類の知恵」の象徴とした。ステージ全体を埋め尽くした車輪は、障害者のための車いすだけでなく、様々なものを動かすことで子どもからお年寄りまで助けてきた人類が誇る発明だということを表現した。
第3幕のテーマは、「多様性」。これまでパラリンピックで10個の金メダルを獲得している、競泳のブラジル代表ダニエル・ディアスが水中を泳ぐ姿がプロジェクションマッピングで映し出されると、ビーチに続々と人や動物が集まりだし、やがて多様性をもつビーチへと一変した。ビーチに集まった人々が掲げる色とりどりのパラソルも多様性の象徴だ。ブラジルでは、車いすでも海に入れるような道具を開発するなど、障害者も海を楽しめる取り組みを進めており、そのこともアピールする内容のパフォーマンスとなった。
その後ピアニストのジョアオ・カルロス・マーティンによるブラジル国歌の演奏が始まると、色とりどりのパラソルが集結しブラジル国旗を形成した。マーティンは指が萎縮していく障害などにより一度はピアノ奏者を辞めたものの、絶え間ない努力により再びピアノの前に戻ってきた経歴をもつ。
第4幕には、各国の代表行進が行われた。先頭は、今回のリオオリンピック・パラリンピックで初めて結成されることになった難民選手団が務めた。騎手は、シリア出身で、現在ギリシャに暮らす競泳のイブラハム・フセイン。フセインは内戦中のシリアで爆撃を受け右足を失った。シリア代表を目指し水泳の練習を続けていたフセインはギリシャでも練習を継続し、今回、難民選手団の代表に選ばれた。日本代表は83番目の登場となった。騎手の上地結衣に続き、60名の日本選手団が行進した。上地は潜在性二分脊椎の車いすテニスプレイヤー。これまで、女子車いすテニスで史上3組目となる4大大会制覇を達成し、今回のパラリンピックでもメダル獲得が期待される選手だ。騎手を務めたことについて上地は、「パラリンピックというアスリートの憧れの舞台で、騎手として日本代表選手団を先導できたこと、非常に光栄です。ひとまず大役を終え、ここからは競技者として結果を残せるよう、集中していきたいと思います」とコメントした。
最後の行進国は開催国のブラジル。ブラジル代表の名前が呼ばれると、会場からは割れんばかりの声援が送られた。ブラジル代表が行進を終えると、会場の中央に完成した巨大なジグソーパズルに心臓の鼓動を表現したプロジェクションマッピングが映し出された。この演出には、「心に限界は無い。そして全ての人に心がある」という今大会のメインメッセージが込められている。パズルを形作るピースの一枚一枚には、パラリンピック代表選手の顔写真が印刷されていた。
(取材サポート:井上香澄)