フェルナンド・アラーナ
横浜大会初出場ながらもPT1男子で銀メダルを獲得したフェルナンド・アラーナ(ブラジル)。レース終了後に、こちらから質問を投げかける前に、彼の方から「僕のレースはどうだった?」と。
「とても感動しました」と伝えると、「それなら良かった」と嬉しそうに笑みを浮かべた。
「2位という結果にはなってしまったが、とても満足している」という。オーストラリアのベテラン、ビル・チャーフィーにスイムで差をつけられ、その後のハンドバイク、車椅子マラソンでも追いつくことはできなかった。しかし、メダルを手にしてから語ったことは次のレースへの意気込みだった。「この銀メダルは、かならず次のメダルに繋がる。とても励みになるよ」
ガッツポーズをしながら、「戦いを挑む者には、不可能はない。レースに参加し、自分の限界に挑戦できるのは最高だ。今日のレースも次のレースもリオパラリンピックに繋がっている。必ず結果を出し、地元でのパラリンピックに出場したい。ブラジル代表に選ばれたなら、また限界に挑むことができる!」とほほ笑んだ。
ロゲリオ・コスタ・リマ
同じ男子PT1のロゲリオ・コスタ・リマ。10位という結果だが、前向きに捉えていた。
「新ハンドバイクでレースに臨んだが、やはり不慣れで、いつもの力を発揮することが出来なかった。ハンドバイク自体は以前のものよりも良く、軽量だが、乗り始め間もないため、この試合へのトレーニング、調整が間に合わなっかった。でも、横浜で初乗り、初試合ができたことは良い経験になった。なぜなら、これほど道路整備、環境が整っているところはないからね。バイク・デビューには最も適した大会だった。次のレースには必ず良い結果がだせるだろう」と、語ってくれた。
また、ロゲリオ・コスタ・リマは、華やかなレースとは裏腹にブラジルのパラトライアスロン選手には苦悩があると話す。
「僕は、トレーニングの合間に支援してくれる友人たちと宝くじの販売や、スポンサー探しに追われたり、物乞いのような行為をしなければならない。そうしないと、遠征資金どころか、生活費さえも確保するのが困難なのだ」というのだ。
辛くないですか?と聞くと、
「正直言ってとても辛いが、そうでもしない限りレースに参加することができない。エントリーし、欠場すると減点になる。それでも、資金不足で参加できなかったこともある」という。
「だから、若者たちに、スポーツを頑張る人は報われる、など希望を持たせるような発言は気軽にはできない。それは僕自身が出来ていないから、無責任になってしまう」
カルロス・ラファエル・ビアーナ
男子PT4のカルロス・ラファエル・ビアーナの場合は、週7日間のトレーニングを欠かさずしている。16歳という若さで、休まずにトレーニングをしている。なぜ休日を設けないのか?と理由を聞いたところ、
「トライアスロンは、僕の仕事であり、趣味でもあり、娯楽でもある。休む必要などない。逆に、トライアスロンをしていない僕はつまらなくて仕方がないよ」と、嬉しそうに話してくれた。
今大会では腰痛に悩まされ、本来のレースができなくて、とても悔しそうにしていた。が、落ち込むことはなく、すぐに次のレースに対する意気込みを語ってくれた。
男子PT2のアンドレ・バルビエリは、夜間タクシードライバーとして働き、朝方から寝て、昼からトレーニングに励み、また夜になると仕事に行くという日々を繰り返している。
ブラジル代表選手達の貴重な時間を共に行動していて見えてきたブラジルの経済状況、政治問題。まさにパラリンピック自体が本当開催できるのだろうか?という不安を抱えながらの横浜大会への出場だった。
各選手がいろんな思いでレースに参加し、結果を出せたもの、出せなかったものがいる。でも共通して言えるのは、皆とても前向きで、9月に地元開催のリオパラリンピックを楽しみに、出場枠の獲得を目指しているということだった。