「思いがけないレースだった!」
2016世界トライアスロンシリーズ横浜大会が5月14日に行われた。パラトライアスロンでオーストラリア注目のブレント・ガーベイは、スイム、バイクまでトランジションも含めトップのタイムでレースを展開。変化が生じたのはランの終盤、ドイツのライバル、ステファン・ロースラーがガーベイを追い抜き、エリートパラトライアスロン男子の部PT2カテゴリーで1位(1時間10分17秒)となり、ガーベイは2位(1時間10分25秒)でフィニッシュした。
「終盤まで良いレース展開で運んだ。最後に、ランを全力で走っていると、ゴール直前のところでステファンに抜きさられたんだ。彼の方が僕より早かったよ」と、レースを振り返ってカーベイは話した。
ガーベイは右足の膝上からがない状態で生まれた。しかし、子どものころから水泳に親しむなど、他の子どもたちと変わらない活発な幼少期を過ごした。
本格的にランとバイクを始めたのは2013年。初めは日常使用する義足で5kmのレースに出場した。レースが終わった後には義足をつけられないほどに足が痛んだという。その後、レース用のブレード義足を装着し、初めて挑んだ世界大会は、9月(2013年)にロンドンで行われた、WTS世界トライアスロンシリーズ・グランドファイナルだった。
同じ年の12月、大腿切断のオーストラリア人選手として初めてアイアンマン・トライアスロン(SunSmart IRONMAN Western Australia、スイム3.8km、バイク180km、ラン42km)に出場。今回のスプリント(スイム750m、バイク20km、ラン5km)とは比べようもないロングレースだった。
どんな困難を抱えていても、常に明るく前向きに道を切り開いていく姿、競技を離れた場でも人々を勇気づけることができる。ガーベイは、自分の経験を生かし、積極的に講演活動も行っているという。
トライアスロン、スポーツへの挑戦は、常に課題を見つけチャレンジしていける。それは、障害を持つ人、持たない人に限らず、多くの人にいい影響を与えていくことができる。「たくさんのファンに支えられている。日本の方からも、横浜に来る前からメッセージをいただいた。そうしたもの全てがプラスになって、レースにつながっている」とも語った。
ーーあなたのモチベーションはどのようなところから来るのですか?
「常に課題を見つけることだと思う。今日のレースでも学びがあった。ステファンは、僕よりもランが早い。ランのタイムは僕よりもずっと良かった。だから今日は彼が勝者だ」
ーー2度目の横浜大会でしたが、いかがでしたか?
「今日は、気温もよく、すばらしい朝日を見ながらの最高のコース・コンディションだった。昨年は病気で出場できなかったが、横浜は世界の中でも大好きな場所、毎年出場したい。今回のレースの結果として、リオで表彰台の一番上を狙うには、あと3分は縮めなければならないだろう」
紛れもないトップアスリートは、まぶしい笑顔でリオパラリンピックへの意気込みも語ってくれた。クールダウンで山下公園を走る背中は、すでに次の課題に立ち向かう力強さに満ちあふれて見えた。