2011年から今年で6度目の開催となるITU世界パラトライアスロン横浜大会。世界各国から集結した56名の障害のある選手が5月14(土)早朝、晴天の山下公園(横浜)でスタートをきった。
最初にゴールテープをきったのは、12日の記者会見にも登場し、有力選手として注目されていた19歳のステファン・ダニエル(PT4・カナダ)だ。横浜では初めて1時間をきる58分56秒のタイムでフィニッシュした。
ダニエルは先天性の障害により左腕に比べて右腕が短い。軽い障害で最も選手が多く激戦が繰り広げられるPT4のクラスになる。
パラトライアスロン初のグランドファイナル(シーズンの勝者を決める最終戦)となった2013年ロンドン大会で3位の成績をおさめ、翌2014年エドモントン(カナダ)でのグランドファイナルで2位。昨年シカゴ(アメリカ)で開催されたグランドファイナルでは、シーズン2連続で王者に輝いていたライバル、ドイツのマーチン・シュルツ選手と競り合い、ついに優勝した。同時に、2016年リオパラリンピックの出場権を獲得。若さと実力を兼ね備えた選手だ。
「メキシコ、ブラジルの選手がスイムに強いのでついていけるように頑張った。よい状態でバイク、そしてランまでつなげていくことができ、このレースで優勝することができて嬉しい」レース直後、 ダニエル選手は満足した表情で語ってくれた。
初出場となった横浜大会のコースについては「スイムの水が冷たかったが気にせず、レースに集中できた。バイクはカーブが多く、市街地を走れてすごく良かった。ランもフラットなコースで走りやすかった」と充実していたようだった。
パラトライアスロンがリオパラリンピックの正式種目に決定した(2010年)ことがきっかけで競技が本格的になり、多くの選手が練習を始めた。いよいよ、今年9月にリオパラリンピックを控えている。
「残りの試合で世界のトップ選手と高め合い、よりよいコンディションでリオに臨みたい。ライバルであるマーチン・シュルツ選手はバイクが得意なので強化して臨みたい」とパラリンピックへの意気込みを語ってくれた。
3年前にパラトライアスロンを始め、今や世界のトップで戦うまでになったダニエルは、アスリートとしての力強さがありながらもスポーツが好きな純粋な気持ちにあふれ、魅力があった。その背中を押す存在として、トライアスロンの元になった競技、長い距離を走る「アイアンマン」出場経験をもつ父や、脳性麻痺を患いながらもカナダ代表のパラスイマーとして活躍する兄、そして現在大学で所属するクロスカントリークラブのチームメートの存在があるという。
「父が勧めてくれ、パラトライアスロンを始めた。一緒に練習に励むクロスカントリーのチームメートは、良き練習相手で刺激になっている」と話していた。
ダニエルは、2020年東京パラリンピック出場も見据えている。
「リオも含めてパラリンピック出場は自分にとって意味のあること。まだ19歳なので東京パラリンピックにも是非出場したい」と話していた。4年後東京で、ダニエルはどんなレースをするのだろう。今後の成長が楽しみで、目が離せない。