■“ブラサカ”人気を支えるモノ
JBFAはこのアジア選手権も有料入場制で開催した。昨年東京で開き、9日間で約8、000人の観客を集めた世界選手権にならったわけだが、今大会はあいにく雨模様の日も多かったにも関わらず、チケット完売で1、300人以上が入場した初日を含め、6日間で約5、500人が訪れた。コアなファンや「世界選手権で初めて見て面白かったから」というリピーターから、「世界選手権を見逃したので」「話題のブラインドサッカーを一度見たかった」という初観戦者まで、競技の人気の高まりと定着ぶりを示した。
人気をけん引するのはもちろん、ブラインドサッカーという競技の魅力と、それをピッチ上で表現する選手たちのパフォーマンスだ。だが、例えば、献身的な応援を連日繰り広げたサポーターたちも人気を支える“功労者”だ。その中心にいるのは、01年に発足した「インフィニティ」というサッカー団体だ。公式サイトによれば、サッカー文化を日本に根づかせ、02年日韓ワールドカップを成功させようと、大学生3名が立ち上げた団体で、現在は約200人の会員がサッカー界を盛り上げようとさまざまな活動を行っている。ブラインドサッカー応援もその一つで、今大会も連日数十人がスタンドに陣取り、応援旗を掲げたり、応援リーダーとなって観客を指揮していた。
スポーツ観戦には「声援」が付き物だが、音が頼りのブラインドサッカーでは、「黙って見守ること」も選手の大きな後押しになる。不慣れなため、つい声を出してしまう観客も多いなか、リーダーは丁重な姿勢でこの独特なマナーについて何度も説いていた。また、ハーフタイムになると、「隣の人と手をつなぎましょう」と呼びかけ、会場の一体感をつくりだそうとした。一体感はスポーツ観戦の醍醐味の一つだ。こんな仕掛けも、“ブラサカ”ファン獲得に一役買っていそうな気がする。
会場の一体感は選手の力にもなる。リオへの夢が絶たれた後のマレーシア戦で2ゴールを決めた川村は、「これまで多くの人に支えられ、多くのサポーターと一緒に戦ってきました。最後は気持ちで負けないように(と思った)。今日の1点目は日本中のみんなで取ったゴール」と感謝した。