25回目を迎えるIPC(国際パラリンピック委員会)公認2015ジャパンパラ水泳競技大会が、9月5〜6日に東京辰巳国際水泳場で行われ、約270名の障害のある選手が出場し、鎌田美希(両下腿欠損・大阪シーホース)女子400メートル自由形によるアジア記録のほか、60の大会新記録などが更新された。世界記録の更新はなかったが、ロンドンパラリンピック100メートル平泳ぎSB14で世界記を樹立した田中康大(知的障害・個人)が今大会もっとも世界記録に近いタイムとして表彰された。
IPC公認大会として、国内で実力を試すことができる最高峰の大会になるが、2020年・東京パラリンピック開催がきまってから2度目となった今回、大阪から東京へ舞台を移した。初日には遠藤利明五輪担当大臣が競技や施設を視察した。
この大会に先立って、7月、グラスゴー(イギリス)でIPC水泳世界選手権が行われ、直前合宿を含む3週間の長期遠征にリオへの主力選手を含む20名の日本代表選手が参加した。ロンドン近郊での練習のすえ出場した大会で、金2個を含む7個のメダルを獲得した。峰村史世日本代表監督は「パラリンピック1年前で各国が力を上げてきている中で、すべき人が役割を果たし何とか最低ラインを維持した」と話していた。
世界大会から1ヶ月、新たな意識でスタートしたタイミングでのジャパンパラとなった。
世界選手権で金2含む4個のメダルとリオの出場権を獲得した木村敬一(東京ガス・全盲)は、2日間で4種目の予選と決勝に出場。最終日、あまり得意でない100メートル背泳ぎも自己ベストを大きく落とさないタイムで泳いでいた。すべての種目が終わり「さすがに疲れましたが、今後もレースをでしか味わえないつらさを経験していきたい!」と笑顔を見せていた。
水の女王・成田真由美がジャパンパラ復帰!
2008北京パラリンピックまで4大会連続出場、数々の金メダルを獲得した水の女王・成田真由美(下半身まひ・横浜サクラ)が、今シーズンから競技の舞台へ復帰した。5日、女子100メートル平泳ぎSB4で自己ベストを出し、6日、100メートル自由形S5で大会記録を更新、ともにリオへの標準記録を突破。男女200メートル自由形・ミックスリレー20ptでも好成績を残し、現役復帰を確実にした。
「東京2020の組織委員会の役員として何ができるか考えた結果、自分が泳いで水泳の楽しさを伝えたいと思いました」と成田は語り、多くの報道陣が耳を傾けた。
リオ1年前となった今大会が終わると、9月後半からはまた遠征が始まる。
今度は知的障害の日本代表が、キト(エクアドル)で行われる知的障害の「INASグローバルゲームス2015エクアドル」へ。キトでは8月15日にマグニチュード5.1の地震が発生し、会場は被災して使えなくなったが、周辺の会場を準備して予定通りの日程で開催されるとのこと。
また、グラスゴーに行けなかった身体障害の選手を中心に、ソチ(ロシア)で「2015IWAS大会」への遠征が行われる。強化指定選手から育成レベルの選手まで、幅広い選手が国際舞台での経験を積めるよう機会を設けて遠征が計画されているようだ。
パラリンピック選手の強化は、オリンピック・パラリンピックがともに推進されるといっても、国内には情報が少なく、これまでも、パラリンピック強豪国との交流により情報を得てきた部分が多い。海外での経験が選手とスタッフ両方の意識や競技力を育ててきたといえる。
一方で、選手発掘や育成、地域での普及が国内大会の課題となるだろう。
「今大会は、日本の障害者水泳のトップ大会として、会場を東京に移し運営面はスムーズに運んだ。女子はリオへの標準記録を突破した選手が想定より少なく残念だが、知的障害男子では標準記録突破した選手が増えている。つぎの国内大会、宮城で11月に行われる日本選手権をIPC公認大会にしようとうごいています。また、リオ後、2020年に向けジャパンパラをオープン大会にして海外の選手もエントリーできるようにしたい」と、大会を終え、日本障がい者水泳協会専務理事・櫻井誠一氏は話していた。
<参考>
公式リザルト