愛着のある眼差しで、パラリンピックを10年以上取材するカメラマン・越智貴雄氏は、ソチパラリンピックで久保恒造を撮影する予定だ。
直感でイイと思った。撮りたくなるものがあった。
「久保に初めて会ったのは2004年、オーストラリアの陸上大会・サマーダウン・アンダーに出場した時のことでした。私は、スイスのハインツ・フライとか、日本の安岡チョークを撮りたいと思って行きましたが、そこで、トラックレースに出場していた久保恒造を見たんです。
久保に『写真を見せて欲しい』って言われて、見せると、写真を念入りにチェックしていたな。話しもして、好きになって、大会があると、自然に久保をみつけて撮影していた。競技が終わったあとに、いつも笑顔をくれる。あれ、なんか嬉しい。
久保は、ひたすら、ひとつのことに、一歩ずつ努力していくアスリートですよ。スキー選手になって日立ソリューションズに入社して、バンクーバーを目指したときも、とても嬉しかった」
バンクーバーでメダルを逃したとき、久保は変わった!
「バンクーバー終わって、すごく変わった。悔しかったと思う。ソチを目指す、と言っていた。そこから、オーラがでてきた。陸上でも、変わった。性格は変わってないと思うけど、バンクーバーでは久保の意識が大きくかわったんだと思う」
これがシットスキー?そんな速さと軽やかさがある。
「久保は、坂道の滑りが素晴らしい。自分の体重とシットスキーを、両手のスティックでコントロールして、びっくりするくらいの早さで登りきる。あれは、みていて気持ちがいい!坂道でのスピードがものすごく速い。もちろん、普通の人にはできないし、観たら誰でもビックリすると思う。なんでこんな速さで滑れるの?!ってね。
久保恒造をみんなに知って欲しい。あそこまでいくのに、どれだけの時間練習して来たのか、坂道の走行をみて、想像してもらえたらと思う」
久保は5年後、10年後にもっと大きくなる。
「アスリートとしては、今は通過点じゃないかと僕は思っています。5年後、10年後に、誰もが凄い!というようなアスリートになっていると思う。たとえば、陸上でいえば、ハインツ・フライぐらいの大きな存在になっているんじゃないかな」
スポーツの中でも、もっとも過酷といわれるシットスキーだが、久保のシットスキーは、あまりにも軽やかというか、久保の走りだけを観ていれば、最も過酷とは見えないかもしれない。坂道をあれだけ早く走れる選手は、世界にもほとんどいない。ソチはバイアスロン・ミドルで頂点を目指している。クロカンのロングも観て欲しい!と、越智さんは熱く語る。
越智貴雄 カンパラプレス主宰
2000年シドニーパラリンピックより、パラスポーツを取材。車いす陸上競技などの迫力ある写真は、日本のパラリンピック選手の力強さ、美しさを伝えている。久保恒造が挑戦するクロスカントリースキーは、雪上のマラソンといわれ、車いす陸上の選手が季節のクロストレーニングとして取り入れることがおおい。スイスのハインツフライや、トラックレーサーの樋口政幸などがシーズンオフに取り組んでいる。