5月16日、横浜・山下公園でトライアスロン・パラエリートのレースが開催され15カ国から60名の選手が参加した。
パラトライアスロンは、スイム750m、バイク20km、ラン5kmを、障害のある選手が座位(PT1)、立位(PT2〜4)、視覚障害(PT5)のクラスに別れてタイムを競いあう。
明け方からの雨はスタート時刻の6時55分には止んで、気温20度、水温18度のなかで定刻にスタートした。
PT2女子・秦由加子が金メダル!
ランキングの近い出場選手5人がひしめいていたPT2(大腿切断など)女子では、秦由加子(マーズフラッグ・稲毛インター)が金メダルを獲得した。
「スイムではじめてバトルを経験しました!」と、笑顔をむけてくれた水泳出身の秦は、1時間28分57秒(スイム12分7秒、バイク40分32秒、ラン13分8秒)で世界ランク1位のメリッサ・ストックウェル(USA)など世界ランク上位の選手を相手に勝ち抜いた。
PT1・アイアンマン・シャボット(USA)が堂々最速タイムで優勝
路面が濡れているためPT1(座位)のハンドサイクル、車いすレーサーは厳しい条件が続いたが、車いすマラソン出身、ハワイアイアンマン世界記録保持者でもある、リッジ・シャボット(USA)が1時間1分50秒の最速タイムで優勝した。
「レースはちょっと大変だったことは認めざるを得ないが、何とか乗り越えた。滑ったり転んだりということもなく、楽しんだ。一番ハードだったのは、バイクだ。道路のコンディションは良くなかったが、手のグリップの具合が良くて、いい操作が出来た。トランジションはうまくいったけど、水から上がるのに遅れが出たかな。スイムそのものは楽しんだよ。水温が自分にはちょうど良く、自分の前で泳いでいる選手が1人いて、安全だった。ランは緊張せずに臨むことが出来た。レース全体は本当に良かった。不安に襲われることがなかったからね。横浜の大会は初めてだったけど、ルートも分かりやすかった。ジュンペイ・キムラは知り合ったばかりだけれども、パワーありそうだね。一緒にレース出来て嬉しいよ」シャボットはレース後のミックスゾーンで話してくれた。
木村潤平は失格
メダルが期待されていた、パラリンピック水泳出身の木村潤平(ABCキュービック)は1時間6分57秒という好タイムでフィニッシュゲートを潜ったが、ランへのトランジッションのミスにより失格となった。リオへのポイント対象レースは7月からになるが、ここでとれるポイントがグランドファイナル出場にもつながるため大きな機会を逃した。
「応援や取材がいっぱいの時にかぎって、失格してしまった。皆さん、ごめんなさい!」と、心配してかけつけた地元横浜の大学生や子供たちを前に、寂しそうに話していた。
PT4・15人が出場の激戦区はロシア、ハンガリー、フランスが表彰台に!
激戦区・PT4(立位)はアレキサンダー・ヤルチック(RUS)がスイムをトップで通過したヤン・ギャンター(FRA)、横浜大会2年目のペーター・ボロンカイ(HUN)を破り1時間2分26秒で優勝。ペーターは昨年も今年も2位となった。
「今日はとてもいいレースだった。自分は雨が好きだからね。ランはとても良かった、スイムはまあまあの出来だったね。バイクは道が滑りやすかったけど、こういう時にはよくあることだよ」ベテラン・ボロンカイは話していた。
横浜大会出場2年目のクロカンのパラリンピアン・佐藤圭一(エイベックスホールディングス)は、体調の悪い中で出場し4位と惜しくもメダルを逃したが「悪くないレースだった。体調が良ければ、さらにタイムを縮めることができただろう」と話した。明日、佐藤はエイジパラへも出場する。
PT5、山田敦子が銀、中澤隆が銅メダル!
PT5(視覚障害)女子は、ケイト・ケリー(AUS)が1時間分秒29秒で優勝。山田敦子(グンゼスポーツ・アスロニア)が昨年より約5分タイムを縮めて1時間19分19秒で銅メダルを獲得した。
PT5男子は、残念なことにリオパラリンピックでの出場クラスをはずれてしまったが、中澤隆(青山トライアスロン倶楽部、タカラ・エムシー、インターフィールド)が元エリート・トライアスリート原田雄太郎コーチをガイドとしてともに出場、7組中3位とシーズン好成績を残した。
昨年の横浜大会ではリオパラリンピックへの正式なクラス分けが行われた。昨年から今年までに、リオパラリンピックでの出場クラスが男子PT1、2、4と女子PT2、4、5と決まった。また、PT2〜4についてはハンドラー禁止とルール改正が行われた。今年はいよいよ、リオパラリンピック1年前となり、出場したパラトライアスリート全員がリオを意識し、集中したレースを楽しんだ。
(写真:中村真人 通訳:真下弥生)