関連カテゴリ: IPC, WPS, 今日の注目記事, 取材者の視点, 国際大会, 夏季競技, 新着, 東京パラムーブメント, 水泳, 水泳トップ, 知り知らせる, 観戦レポート, 重度障害, 障害, 静岡 — 公開: 2025年4月12日 at 3:35 AM — 更新: 2025年4月13日 at 7:27 AM

ポイント制で戦うパラ水泳が真の強者を魅せる!【ワールドシリーズ2025フォトレポート(下)】

知り・知らせるポイントを100文字で

男子50m平泳ぎA決勝で、鈴木孝幸(SB3)が優勝、メキシコのCASTORENA VELEZ Jose Arnulfo(SB2)は2位。半年前、2人は、パリ2024パラリンピックで金メダルを獲得した。ポイント制のレースでは、この「レジェンド同士の競い合い」が実現する。両者がこだわり続けてきたこの種目にどんな思いを込めたのか。その言葉を追った。

「東京2020大会で集中して泳げた経験があり、この静岡大会に出場しました。日本の人々はとても親切で、国も美しい。また戻ってこられて本当に嬉しいです」
男子50m平泳ぎ予選後、笑顔で語ったのはホセ・アルヌルフォ・カストレナ・ヴェレス(=CASTORENA VELEZ Jose Arnulfo/SB2/メキシコ)。現在46歳、パリ金メダリストであり、シドニー大会(2000年)から第一線で泳ぎ続ける大ベテランである。

伝える泳ぎ”を胸に──メキシコのレジェンド、カストレナは8度目の挑戦へ

決勝のスタートを待つカストレナ(MEX) 写真・秋冨哲生

「より速く、より良い泳ぎを目指している。今回も自分のスピードを少しでも高められるよう努めてきました」と語り、パフォーマンス向上への執念をにじませる。
将来について問うと、「いつか引退する日が来たら、障害のある若いアスリートを育てる指導者になりたい。パラリンピックに出場できる選手を育てるのが夢です」と次世代への責任と希望を語った。

男子50m平泳ぎA決勝の表彰式。1位・鈴木孝幸、2位・José Arnulfo Castorena(MEX)、3位・NAKANANRAM M(THA) 写真・秋冨哲生

競技に関わって良かったことは、「地元ハリスコ州では、自分のことを認めてもらえるようになった」「一番嬉しいのは、子どもたちが“あなたのようになりたい”と声をかけてくれることです」
カストレナのその言葉には、スポーツが人に与える力への確信が込められていた。

今回、50m平泳ぎ決勝では鈴木が優勝したが、カストレナの果たした役割は大きい。
「もう少し速く泳ぎたかった。でも、これは次に向けた準備。目指しているのは自己ベストの更新です」
次なる舞台はドイツでのシリーズ戦、そしてシンガポールでの世界選手権(11度目の出場)。その先には、自身8度目の出場となるロサンゼルス・パラリンピックへの夢がある。

4月11日、男子50m平泳ぎA決勝を泳ぐJosé Arnulfo Castorena(メキシコ) 写真・秋冨哲生

「肩の腱が切れていて、手術をすれば私の競技は終わりだ。それでも前に進みたい」
「鈴木選手は上のクラスで、彼のほうが速いのは当然。でも、ポイントで接戦できたことは誇らしい。こうして一緒に競えることが、自分を強くしてくれるんです」

アジアでの大会に特別な思いもある。「東京や北京でも泳ぎましたが、アジアで世界大会が開かれることは嬉しい。若い世代が育っていくのを見られるのは、何よりの刺激です」
「大切なのは、自分の限界を超えること。順位よりも、自分に勝ち続けること」

レースは一瞬だったが、その泳ぎや放つメッセージは、これからの世代へ確かに届けなくてはならない。

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(写真取材・秋冨哲生)

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