2025年4月11日、静岡県富士水泳場での「パラ水泳ワールドシリーズ富士・静岡2025」2日目の男子50m平泳ぎA決勝で、地元・静岡出身の鈴木孝幸(SB3/ゴールドウイン)が49.49秒(=866ポイント)の好タイムをマークし、優勝を果たした。

2位には、同じくこの種目を専門としてきた46歳のホセ・アルヌルフォ・カストレナ(=CASTORENA VELEZ Jose Arnulfo/SB2/メキシコ)が続いた。
鈴木孝幸が“原点のレース”50m平泳ぎで優勝!
「タイムも非常に良かったので、全体としてとても嬉しく思います。2位の選手とは10秒近い差がありましたが、彼は(自分より障害の重い)SB2クラスの選手なので、その差自体はあまり気にしていません。ただ、予選時点で“50秒台が出せれば”と思っていた中で、49秒台が出たのは予想以上の結果で、とても満足しています」

「今回の50m平泳ぎにはSB2〜SB3クラスの選手しか出場しておらず、競争率としては高くなかった」と鈴木はいうが、SB2クラスで2000年シドニーパラリンピック以降、複数の金メダル、国際舞台で活躍を続けるカストレナにポイントで競り勝てたことについては大きな意味があるのではないだろうか。

WPSポイント制によるレースでは、異なる障害クラスの選手が、各クラスの世界記録を基準値(=1000pt)としてタイムを換算し、順位を競う。クラスを越えて競い合える“オープンな競技構造”は、パラ水泳の大きな魅力を引き出す。
「順位にはこだわっていないけれど、自分の泳ぎをしっかり出すことができたことが嬉しい」。
鈴木は、前日の100m自由形での疲労を抱えながらも、予選での課題だったリカバリー動作を修正し、テンポと大きな泳ぎを両立。冷静な自己分析と実行力は、長年世界の舞台で戦ってきた経験に裏打ちされていて、さすがだ。
観客席からは、地元・静岡で力泳を見せたレジェンドへ温かい拍手が送られた。新たなシーズンの幕開けに、鈴木孝幸はまた一歩、未来へと泳ぎ出した。
〜ワールドシリーズ2025フォトレポート(下)〜へつづく
(写真取材・秋冨哲生)