関連カテゴリ: IDクラス, IPC, デイレポート, 国際大会, 夏季競技, 新着, 普及, 水泳, 水泳トップ, 観戦レポート, 静岡 — 公開: 2025年4月10日 at 10:33 PM — 更新: 2025年4月14日 at 12:59 AM

山口尚秀、復活の世界新! 富士のプールに歓喜が沸く 〜パラ水泳ワールドシリーズ2025〜

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日本初開催となったパラ水泳ワールドシリーズ富士・静岡2025が開幕した初日、男子100メートル平泳ぎ(SB14クラス=知的障害)で山口尚秀(四国ガス)が自身の持つ世界記録を更新する快挙を成し遂げた。レースが行われた富士水泳場には、歓声と拍手が響き渡った。

世界新記録を叩き出した山口尚秀(SB14)の男子100m平泳ぎA決勝での泳ぎ。 写真・秋冨哲生

「パリで出したかった。遅くなってしまいました」と山口。レースは予定より約20分遅れてのスタートとなったが、山口は冷静に対応した。序盤は「気分が悪くなって、少し落ちてしまった」と振り返ったが、後半には見事にペースを立て直し、力強いスパートでフィニッシュ。1分01秒64のタイムで、自らの世界記録を更新した。

男子100m平泳ぎA-Final 表彰式。1位、山口尚秀(四国ガス)=WR、2位、PAVLENKO Artem(NPA)=S14(知的障害)、3位、ZHUMAGALI Nurddaulet(KAZ)=SB12(視覚障害)。 写真・秋冨哲生

半年前のパリで、足の小指の怪我により本調子でなかった山口は連覇を期待されながらも銅メダルに終わった。しばらくは気持ちが沈みこんでいたようにも見えた山口だが、ミックスゾーンでの様子を見る限り前向きなアスリートに戻っていた。「もっとパリ大会のように、たくさんの観客に来てもらいたかった」。観客席についての率直な思いも口にし、空席の目立つスタンドに寂しさを感じながらも「応援してくれる方々の存在が本当に力になった」と、地元・愛媛から帯同したトレーナーやオンラインで応援する所属企業への感謝の思いを強く語った。

山口は2019年の世界選手権(ロンドン)に初出場、初優勝を果たし、当時の世界記録を更新。東京パラリンピックでは再び世界記録を塗り替え、金メダルを獲得している。今回の記録は、2023年3月に同じ富士のプールで開催されたチャレンジレース(代表選考会)での1分02秒75を上回るものであり、金メダルの獲得は2023年マンチェスター世界選手権以来、約1年半ぶりの国際大会での栄冠となった。

世界記録を更新した山口と称え合う2位のPAVLENKO Artem(NPA) 写真・秋冨哲生

今後はシンガポールで開催される世界選手権を見据えており、「さらに速くなれる実感がある」と意欲を見せる。明日以降は専門外の種目にも挑戦する予定で、「チャレンジとして全力で臨みたい」と力を込めた。

また、地元・愛媛で支えてくれる治療スタッフやボディケアのサポートにも触れ、「スポーツを通じて、地域に活気や勇気を届けたい」と語る山口。世界の舞台で再び存在感を示した若きスイマーの挑戦は、これからも続く。

(写真取材・秋冨哲生)

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