パリパラリンピックのトライアスロンは、水質が基準を満たさなかったことによる影響で、日程は1日遅れ、加えて当初予定されていた2日間の全日程を1日で行なうこととなった。アスリートたちはその変更に動じることなく、「全ての選手が同じ条件だ」とレースに挑んだ。
パラトライアスロンの舞台がヨーロッパの中心である「パリ」で行われたことは、選手たちにとって大きな意味を持ち、パリ市民、多くの観客を巻き込んだ。
オランダのJetze Platが3連覇を達成
男子PTWCクラスで注目を集めたのは、オランダのJetze Plat。プラットは2016年のリオ大会、2020年の東京大会に続き、パリ大会でも金メダルを獲得した。3連覇を達成し、パラトライアスロン史に新たな歴史を刻んだ。
レース後、Platは「これで終わりではないと、この後の日程で行われる自転車ロードレースやマラソンに挑戦し、さらなるメダルを狙う」と語り、挑戦への意欲を示した。(実際にサイクリング(ロード)ではタイムトライアルとロードレースで金メダルを獲得。マラソンでは9位)
銀メダルはオーストリアのFlorian Brungraber、銅メダルは同じくオランダのGeert Schipperが獲得し、ヨーロッパ勢が表彰台を独占、このクラスで競技した日本の木村潤平は8位入賞を果たした。
地元フランスの英雄、Alexis Hanquinquantが圧勝
男子PTS4クラスでは、地元フランスのAlexis Hanquinquantが圧倒的な強さで金メダルを獲得し、フランス国民を熱狂させた。彼は地元での優勝に大きな希望を抱いていた。そして、家族や友人が見守る中での勝利を「一生忘れられない瞬間だ」と語った。
銀メダルはアメリカのCarson Clough、銅メダルはスペインのNil Riudavets Victoryが獲得し、ヨーロッパとアメリカのトップアスリートたちによる戦いが繰り広げられ沿道はもりあがった。このクラスに出場した日本の宇田秀生は12位だった。
悲願の金メダルを手にしたLauren Parker(オーストラリア)
女子PTWCクラスでは、オーストラリアのLauren Parkerが金メダルを手にした。
Parkerは、東京2020大会でわずか1秒差で金メダルを逃し、今回のパリ大会でリベンジを果たす形となった。レース後、Parkerは「この3年間、毎日がこの金メダルに向けた準備だった」と語り、努力の結晶としての勝利をかみしめた。
アメリカのHailey Danzが金メダルを獲得
女子PTS2クラスでは、アメリカのHailey Danzが金メダルを獲得した。ダンツは東京2020大会でも銀メダルを手にしており、今回のパリ大会で悲願の金メダルに輝いた。
レース後、ダンツは「これまでのすべての努力が報われた瞬間だった」と語り、自らのパフォーマンスに満足感を示した。また、イタリアのVeronica Yoko Plebaniが東京大会の覇者・アメリカのAllysa Seelyとの激戦の末銀メダルを獲得し表彰台を飾った。またプレパニーはレース後、「銀色のドレスをパーティーのために用意していた」と笑顔で語った。
視覚障害クラスでの激戦
視覚障害のPTVIクラスでも熾烈な競争が繰り広げられた。男子では、イギリスのDave EllisがガイドのLuke Pollardと共に、念願の金メダルを獲得した。長年にわたってパラリンピックの頂点を目指してきたEllisは、レース後、「ついに夢が叶った」と喜びを語り、長いキャリアの集大成としての勝利を強調した。フランスのThibaut Rigaudeauが銀メダル、同じくフランスのAntoine Perelが銅メダルを獲得し、地元フランス勢が活躍した。
女子PTVIクラスでは、スペインのSuzana Rodriguezが金メダルを獲得した。彼女は東京2020大会に続き金メダルを手にしており、2大会連続の優勝を果たした。
Rodriguezはレース後、「これまでの困難を乗り越え、再びパラリンピックの頂点に立ったことが感動的だ」と語り、ガイドのSara Perezとの強固なパートナーシップを讃えた。
日本勢の奮闘
パリ大会には日本から4名の選手が出場し、各自が限界に挑んだ。男子PTWCクラスに出場した木村潤平は8位に入賞した。
「メダルが欲しかったが、全力を尽くせた」と、結果に対して誇りを持ちながらも悔しさをにじませた。
木村はこれまでのパラリンピックで数々の経験を積み重ねてきた。特にアテネからパリまでの20年以上にわたる戦いの中で、彼はパラリンピックの舞台が変わらぬ特別な場所であると語る。「ここに立つ全ての選手たちは、いつも変わらない、世界最高峰のアスリートだ。この舞台に挑むことができることは本当に光栄なこと」と木村は述べ、「ここにまた戻りたい」とパラリンピックへの思いを深めた。
一方、女子PTS2クラスに出場した秦由加子は9位。得意のスイムでは苦しみ、石畳のコースでは思い描いたレースとはならなかった。「横浜と同じ石畳だったが、より厳しいコースだった。支えてくれた家族やチームに感謝している」と、感想と同時に感謝の言葉を述べた。彼女にとっても、パリという舞台で戦うことは大きな意味を持ち、次なる挑戦への意欲を示した。
秦は、パリでのレースの全てを受け止め、同じクラスPTS2の仲間と競えたことの喜びを感じ、涙を滲ませながら、込み上げる想いを口にした。
男子PTVIクラスに出場した米岡聡は11位、男子PTS4クラスでは宇田秀生が12位だった。米岡は「最後まで諦めずに走れたことが誇り」と語り、宇田もまた「家族の支えが大きかった」と感謝の気持ちを述べた。両選手ともに、今大会で得た経験を次に繋げたいと語り、さらなる成長を誓った。
パリ2024パラリンピックのパラトライアスロンは、アスリートたちにとって一生忘れられない大会となった。多くの選手たちが見せた勇気と挑戦の姿は、観客のみならず世界中のファンに感動を与えた。
オランダのJetze Platの3連覇、地元フランスのAlexis Hanquinquantの圧倒的な優勝、そして、スペインのSusana RodriguezやアメリカのHailey Danzのような選手たちが見せたパフォーマンスは、パラリンピックがいかに激しい競技であり、精神力や努力がどれだけ重要であるかをパリの街に伝えるものだった。
日本勢もまた、その努力と挑戦を存分に見せ、次世代への希望を繋げる重要な一戦となった。パラリンピックは、スポーツの頂点だ。そこに挑むアスリートたちの姿は、多くの人々に勇気と希望を与え続ける。パリでの大会は、その意義を改めて確認させるものとなった。
日本の選手たちも、休息ののち次なる挑戦への意欲を蓄えるだろう。彼らが見せてくれたアスリートの感性と情熱は、パラリンピックムーブメントの宝である。
(校正・そうとめよしえ、地主光太郎)