9月8日まで開催中のパリ2024パラリンピック。競技の行方はもちろんのこと、せっかくなら街の雰囲気や人との出会いも伝えたい。祝祭ムード溢れるパリの街角から、現地の様子をお届け。
パラリンピックの期間中、パリ市内では障害のあるアーティストの作品を紹介するアート展が開かれた。
パリ中心部のオランジュリー・デュ・セナで開かれたのは「L’Art coûte que coûte(ラール・クトゥ・ク・クトゥ)」という名のアート展。フランス語で「何をおいても芸術」を意味し、アートやクリエイティブの大切さを訴えた。会場には障害のあるフランス人アーティスト30人による約80点の作品が展示され、カラフルな色彩で来場者の目を楽しませている。
展覧会の主催はAPFフランス・ハンディキャップ協会。担当者によれば、会は戦争や暴力に代わるポジティブな選択肢として芸術を推進し、障害者の才能や視点を紹介することがねらい。タイトルの「何をおいても芸術」にはそんな思いが込められているという。
絵とダイビング
作品もさることながら、作風も個性的。アーティストの一人、マーティン・ビュッフェは車いすユーザーであり、水中アーティスト。幼い頃に神経筋疾患であるシャルルボワ・サグネ失調症を患い、病気の進行で車いす生活に。3年前のブルターニュ移住をきっかけにダイビングに出会い、仲間の協力で“水中で絵を描く”という偉業に成功した。以降、海や水をテーマにした作品を残している。
彼は協会のインタビューで日常での不便さに触れた上で「水中で出会った自由をうれしく思った」と語る。その自由を喜ぶかのような躍動感あるタッチが心に残った。
担当者は「障害者は他の人にもたらすものがたくさんあります。特に芸術の面で、多くをもたらしています」と話す。アートの祭典もまた、パラリンピックの大切なメッセージを届けている。