関連カテゴリ: Paris2024, 取材者の視点, 周辺事情, 国際大会, 夏季競技, 新着 — 公開: 2024年9月7日 at 2:31 PM — 更新: 2024年9月7日 at 4:21 PM

【パリの街角から】ダウン症や自閉症の人が働くカフェ。「ジョワイユ」が教えてくれたこと

知り・知らせるポイントを100文字で

パリ・シャンゼリゼ通りに佇む「カフェ・ジョワイユ」はダウン症や自閉症などの障害がある人が働いています。カフェが目指す「インクルージョンな社会」とは。

9月8日まで開催中のパリ2024パラリンピック。競技の行方はもちろんのこと、せっかくなら街の雰囲気や人との出会いも伝えたい。祝祭ムード溢れるパリの街角から、現地の様子をお届け。

ダウン症や自閉症の人が働くカフェ

パリを代表するメインストリート、シャンゼリゼ通りに変わったコンセプトのカフェがある。ダウン症や自閉症などの障害がある人が働く「カフェ・ジョワイユ」だ。

シャンゼリゼ通りに佇む「カフェ・ジョワイユ」。「他にはないカフェ(A CAFE LIKE NO OHTER)」というキャッチーなコピーが目立つ。筆者撮影

“joyeux(ジョワイユ)”とはフランス語で「ハッピー」や「楽しい」を意味する。その名の通り、たっぷりの日差しが注ぐ店内は明るい雰囲気で、天井に飾られた店員たちの笑顔の写真が優しく出迎えてくれる。お店に来る人や働く人たちも自然と会話を交わすなど、和やかな雰囲気が印象に残った。

天井が高く開放的な店内。店員たちの顔写真が出迎えてくれる。筆者撮影

安定した雇用を

カフェ・ジョワイユは非営利団体によって運営され、2017年にフランスのブルターニュ地方、レンヌで1号店が誕生した。背景にあるのは、障害のある人たちの脆弱な雇用体系だ。たとえば、アメリカには800万人以上の知的・発達障害のある人がいるが、そのうち職に就けているのはわずか20%。不安定な雇用や低賃金、清掃や皿洗いなどバックヤードでの仕事が多いという課題もある。

カフェのミッションを店内の中心に据えることからも信念が伝わる。写真・中村 Manto 真人

カフェ・ジョワイユは「職場での雇用や訓練、出会いを通して、知的・発達障害のある人のインクルージョンを促進する」というミッションの下、障害がある人を正社員として積極的に採用。仕事内容もレジでの接客や配膳など、バックヤードではなく来店客と直接関わるのも大きな特徴だ。現在はヨーロッパに21店舗を構え、2024年3月21日「世界ダウン症の日」には全米1号店となるニューヨーク店がオープンした。カフェの利益はすべて障害者の雇用や職業訓練に再投資されるという。

店内では従業員同士がレジ打ちのサポートをしていたり、客が「このオーダーはあっちのテーブルかも」とサポートしている姿を見た。ちょっとレジが遅くても、オーダーを間違えちゃっても、オッケー。助け合えばできることが、ある。忙しないパリの街角で大切なことを教えてもらった。

元気なイエローカラーが目印。客や従業員に親しみを持ってもらえるようなデザインが狙い。フランス人の有名インテリアデザイナー、サラ ポニアトフスキーによって設計された。筆者撮影
パリといえば美味しいブリオッシュ。目線の先には凱旋門が広がる。筆者撮影

(校正・佐々木延江)

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