9月8日まで開催中のパリ2024パラリンピック。競技の行方はもちろんのこと、せっかくなら街の雰囲気や人との出会いも伝えたい。祝祭ムード溢れるパリの街角から、現地の様子をお届け。
ダウン症や自閉症の人が働くカフェ
パリを代表するメインストリート、シャンゼリゼ通りに変わったコンセプトのカフェがある。ダウン症や自閉症などの障害がある人が働く「カフェ・ジョワイユ」だ。
“joyeux(ジョワイユ)”とはフランス語で「ハッピー」や「楽しい」を意味する。その名の通り、たっぷりの日差しが注ぐ店内は明るい雰囲気で、天井に飾られた店員たちの笑顔の写真が優しく出迎えてくれる。お店に来る人や働く人たちも自然と会話を交わすなど、和やかな雰囲気が印象に残った。
安定した雇用を
カフェ・ジョワイユは非営利団体によって運営され、2017年にフランスのブルターニュ地方、レンヌで1号店が誕生した。背景にあるのは、障害のある人たちの脆弱な雇用体系だ。たとえば、アメリカには800万人以上の知的・発達障害のある人がいるが、そのうち職に就けているのはわずか20%。不安定な雇用や低賃金、清掃や皿洗いなどバックヤードでの仕事が多いという課題もある。
カフェ・ジョワイユは「職場での雇用や訓練、出会いを通して、知的・発達障害のある人のインクルージョンを促進する」というミッションの下、障害がある人を正社員として積極的に採用。仕事内容もレジでの接客や配膳など、バックヤードではなく来店客と直接関わるのも大きな特徴だ。現在はヨーロッパに21店舗を構え、2024年3月21日「世界ダウン症の日」には全米1号店となるニューヨーク店がオープンした。カフェの利益はすべて障害者の雇用や職業訓練に再投資されるという。
店内では従業員同士がレジ打ちのサポートをしていたり、客が「このオーダーはあっちのテーブルかも」とサポートしている姿を見た。ちょっとレジが遅くても、オーダーを間違えちゃっても、オッケー。助け合えばできることが、ある。忙しないパリの街角で大切なことを教えてもらった。
(校正・佐々木延江)