関連カテゴリ: Paris2024, ボッチャ, リモート取材, 国際大会, 夏季競技, 新着, 重度障害 — 公開: 2024年9月4日 at 3:52 PM — 更新: 2024年9月9日 at 1:35 AM

【ボッチャ】BC3有田・一戸ペア ベスト8進出ならず

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ボッチャBC3有田正行・一戸彩音ペアはタイブレークに勝てばベスト8進出までせまったものの勝ち切れず、初出場のパリパラリンピックの戦いを終えた。

パラリンピックで、もっとも重い障害のアスリートが競うボッチャBC3クラスは、パリ2024パラリンピックから男女別に行われることとなり、HO Yuen Kei(香港)が女子個人種目初の金メダリストに、男子はJEONG Howon(韓国)が優勝した。
日本代表『火ノ玉ジャパン』の有田正行、一戸彩音はパラリンピック初出場。有田は初戦のCARVALHO Mateus(ブラジル)には5-4と勝利したものの、その後、POLYCHRONIDIS Grigorios(ギリシャ)、MENARD Jules(フランス)には連敗し予選プール敗退。
一方、一戸彩音はCALLUPE Niurka(ペルー)、NTENTA Anna(ギリシャ)、
FERRANDO Stefania(アルゼンチン)に3連勝しベスト8進出を果たしたが、準々決勝でKANG Sunhee(韓国)に2-3と敗れ個人戦を終えた。

ボッチャ競技が行われた パリ南アリーナ    写真・中村 Manto 真人

そうした2人に残されたのはペア戦である。
パラリンピックペア戦本番に向けて、有田正行、一戸彩音の2人は国内合宿を積み重ねてきた。
「私の場合は活舌が悪い。一戸選手の場合言語障害がある」と有田が言うように、当初はお互いの言葉を聞き取るのも難しかった。しかし「短い言葉で何を言いたいかの確認」「聞こえなくても、次の展開や、2人が何をやって同じゴールに向かうのか、言葉や映像を通してイメージを作るという作業」を積み重ねることにより、イメージを共有してきた。
パラリンピック前の最後の国際大会Montreal 2024 World Boccia Cupでは金メダルも獲得した。
「一球一球相談しながらベストな選択ができる。そういうペアになっている」と自信を持ってパラリンピックペア戦に臨んだ。

国内合宿で話し合う (左から)有田正行、コーチ、有田千穂(ランプオペレーター)、一戸彩音  写真・佐々木延江
国内合宿での練習 狙いを定める一戸彩音、ランプオペレーターの父・一戸賢司  写真・佐々木延江

BC3ペア戦には12か国が参加、3チームずつ4つのグループに分かれ上位2チームがベスト8に進出する。
日本の初戦は地元フランス。有田が個人戦で敗れた相手でもある。フランスは既に初戦のオーストラリア戦を落としており、日本はこの試合に勝てば準々決勝進出が決まる。

第1エンド、一戸が相手の青球を弾いてはジャックボール(以下ジャック)に寄せ、有田が最後を締め2点を先取、幸先のよいスタートを切った。
第2エンドはフランスペアが6m、有田から遠い右サイドの位置にジャックを置くが、日本が1点を加点し3-0とリードを広げた。だが有田はややショートするなど距離感に苦しむ場面も見られた。
第3エンド、有田の3投目(ペアの最終球)は狙いより左に外れ、フランスに1点を返される。

第4エンドもフランスペアは第2エンドと同じ位置にジャックを置く。有田、一戸は、狙いより強い、右にずれる、左にずれる、弱く右にずれるなど不確定なコート面に苦しみ6球を投げ切ってしまう。フランスは4投を残しており逆転負けの危機に瀕したが2点止まりで3-3となり、勝負はタイブレークに持ち込された。

そうして迎えたタイブレーク、有田・一戸ペアの最終投球となる有田の3投目、審判が『すき間ゲージ』でジャックと赤球青球までの距離を測るが、わずかに青がジャックに近い。
「赤と青がほとんどついているような状況だったので赤で赤を押し込んで終わる。それしかない」
有田が自らの赤球で、赤球とその奥のジャックボールを奥に押し込めれば、青球からジャックを離すことができる。そういう狙いだった。実際、ジャックを青球から離すことはできたがわずかだった。投球がやや弱く、押し込み切ることはできなかった。
その後フランスの最終投球時点では、わずかに赤球がジャックに近い。つまりこのまま終われば日本の勝利となる。だが、ランプ3段最上部から転がり落ちた青球が、日本の赤球をジャックから引き離しフランスが逆転勝利。
有田・一戸ペアは紙一重のところで勝利を逃し、この試合でのベスト8進出はならなかった。

有田に第4エンドでの投球の乱れを問うと、「8コートありますけど、一つ一つ曲がりが違う、距離も違う。いろんな不確定要素がありましたけど、ただ皆同じ条件なのでそこをアジャストできなかったというところが敗因だったと思います」とフランス戦を振り返った。

約1時間半後に行われたオーストラリア戦では、第1エンドに3点を先制されたが第2エンドには2点を返し1点差に迫る。しかし第3、4エンドに1点ずつを追加され、2-5で敗れた。
その結果、オーストラリアとフランスが準々決勝へ、日本の有田・一戸ペアのパラリンピックが終わった。

ペア戦を終えて一戸彩音は「負けてしまいここで終わってしまいましたが、有田さんと私、オペレーター、コーチと合わせて5人、しっかりと練習してきたことを出せたので、今までやってきたことは無駄ではなかった。ボッチャの活動を始めて、部活動も含めて6~7年になります。そのなかでパラリンピックという大舞台に立てたのはとてもうれしく思いますし、支えていただいた皆さんに感謝しています」と大会を振り返った。

有田正行は「ここで終わってしまいましたが、たくさんの人たちに支えてもらいながら本当に多くの練習、合宿、試合を経て、ここまで歩んできた道のりは何も間違っていなかった。この競技を始めて約7年、パリ大会に向けて積み上げてきた思いというのは強くありましたし、ボッチャというスポーツをこれだけたくさんのお客さんに観てもらい、すごくいい経験になりました」とパリパラリンピックを振り返った。
(現地取材・地主光太郎)

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