9月2日、男子100m平泳ぎS14(知的障害)で、カナダのベネット・ニコラス(CAN)が1:03.98で優勝、オーストラリアのミシェル・ジェイクが2位となった。2019年からワールドレコードを更新する山口尚秀は3位、銅メダルとなり、東京からパリに続く連覇を阻まれた。
山口は「連覇とか、自分の記録を超えたいっていう気持ちが入りすぎてしまったようだ」と競技後を振り返る。山口にとって初めての有観客でのパラリンピック。明らかにこれまでとは違うまさに「熱狂」の渦の中で、王者の心も揺れていたようだった。それでも表彰式で祝福され、パレードが終わると「悔いはない。泳ぎの面とか、メダルの色についても、これが今の自分だ」と何か吹っ切れたようにいつもの明るく前向きな口調が戻ってきた。
東京大会5位の22歳のニコラスは、「すごく驚いている、栄誉に思う。この1年間ストロークの速さも向上した。すごく自信になった」と競技後のインタビューに答えた。カナダBC州出身で10歳から水泳を始め彼を心から支援する妹をコーチとして練習に取り組んでいる。
初日、男子200メートル自由形S14で銀メダルを獲得したオーストラリアのジェイクは、「隣に山口選手が見えたので、彼について行こうと思って泳いだ。彼の黒い帽子が遠ざかっていくのを見て、彼の前にいると思った。反対側にニコラスが見えた。ニコラスはすごい。僕らは仲間だ」と話した。ジェイクは元々陸上選手で走り幅跳びや走り高跳びをやっていたが、平泳ぎに情熱を持って取り組んでいる。
山口の世界記録(1:02.75)がまだ破られたわけではない。自分の記録を超えるための力強いライバルに出会ったことで山口の競技人生は新たな展開を迎えた。これからが楽しみだ。
男子50m自由形S9でシモーネ・バルラームが世界記録!
イタリアのシモーネ・バルラームが男子50m自由形S9で自身の世界記録(23.96)を更新した。このS9クラスはパラ水泳の中でも障害が軽いため、健常者に近く、パラリンピックでは激戦区であり挑戦する人が多い。日本では昨年(2023年)に引退した山田拓朗がリオパラリンピックの銀メダリストである。その挑戦は岡島寛太に引き継がれた。
(校正・そうとめよしえ)