凱旋門の「スリーアギトス」を見て、“あぁ本当にパラリンピックが始まるんだな”と実感する。8月28日に開幕するパリ2024パラリンピック。競技の行方はもちろんのこと、せっかくなら街の雰囲気や人との出会いも伝えたい。祝祭ムード溢れるパリの街角から、現地の様子をお届け。
車いすユーザーの取材メンバー
パラフォトには障害のある仲間がいる。取材メンバーのひとり、粟田修平さん(通称:粟ちゃん)は生まれつきの骨形成不全症により自力歩行が難しく、日常生活では電動車いすを利用している。出発便が同じだったこともあり、私は粟ちゃんの同行者としてパリへの道中を共にした。
パリ到着後、空港には車いすがそのまま乗車可能な「アクセシブル・タクシー」が乗り入れており、到着ロビーからスムーズにタクシーに乗ることができた。“空港で電動車いすが乗れるタクシーが見つからなかったらどうしよう。上手く手配できるかな”とハラハラしていた私にとって、ラッキーな出来事。でもそれは、人のサポートが大きかったように思う。空港の地上スタッフは大荷物の私たちを見つけると、まずカートを用意し、電動車いすをピックアップするゲートまで案内。途中お手洗いに立ち寄ってくれ、タクシー乗り場まで案内し、果てはタクシー会社に交渉してアクセシブルタクシーを呼んでくれていた。自分たちで右往左往していたら、きっと倍以上の時間がかかったと思う。旅の始まりにありがたいサポートだった。
パリ市内に出ても道ゆく人に救われた。宿の入り口で想定外の段差があり車いすが通れない。100キロを超える電動車いすは簡単に持ち上げることができず、これまたハラハラ。でも不思議と道ゆく人が続々と「手伝う?」「大丈夫?」と手を貸してくれて、なんとか段差を乗り越えることができた。
迷いのない「おせっかい」
東京で暮らしている私にとって、その温かい“おせっかい”は新鮮だった。手を差し伸べることに一つの迷いもない様子が、それでいてさらっといなくなる姿が、なんだか心地よかった。もちろん全員がそういった人ばかりではないし、実際にパリの地下鉄はバリアだらけで大きな駅にしかエレベーターがないなど課題も多い。取材中に出会ったフランス人記者は「地下鉄では車いすや障害のある人を見かけない。見かけないということはつまり、その問題が見えていないということ。環境を変えていくことが大事」と話し、ハードとソフトの両面でバリアフリー社会を育むことが大切だと改めて感じた。
フランスでは26日、パリを含むイル・ド・フランス地域圏の議長バレリー・ペクレス氏がパリの地下鉄をすべての人が使えるようにする“METRO FOR ALL”を計画する準備があると話した。パラリンピックの開催が、どうか社会をより良くするきっかけになってほしい。“おせっかい”に救われた一人として、そんなことを願った。
<参考/あわちゃんのバリパリ観戦き>
https://www.instagram.com/paraphoto_official/
(校正・佐々木延江)