関連カテゴリ: Paris2024, イベント, ボッチャ, 国内大会, 夏季競技, 東京, 観戦レポート, 重度障害 — 公開: 2024年8月12日 at 4:06 PM — 更新: 2024年8月22日 at 10:23 PM

紀子さまも観戦!もう一つの甲子園。第9回全国ボッチャ選抜甲子園「パリへ行く日本代表の強さの秘密がここにあった!」

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第9回ボッチャ甲子園が開催され、秋篠宮妃紀子さまもご観戦された。優勝は千葉県「船橋夏見特別支援学校 なっつみーズ」

パリオリンピックが終盤に近づき、兵庫県西宮市では、高校野球、夏の甲子園大会が開幕した。8月10日、東京都墨田区のひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)で、特別支援学校などを中心に全国から障害のある中・高校生が集まり、競い合う「第9回全国ボッチャ選抜甲子園決勝大会(以下、ボッチャ甲子園)」が開催され、千葉県の「船橋夏見特別支援学校 なっつみーズ」が優勝した。

ボッチャ甲子園決勝戦は、「なっつみーズ」と「けやっきーず」で戦った。 筆者撮影

9回目になるこの大会は、若手ボッチャ選手の登竜門であり、パラリンピックへとつながっている。
この日は、秋篠宮妃紀子さまもご観戦され、選手たちに温かい励ましの言葉をかけられていた。

パラリンピック種目ボッチャ

ボッチャは、IPC(国際パラリンピック委員会)傘下のCP-ISRA(国際脳性麻痺者スポーツ・レクリエーション協会)により重度脳性麻痺者(BC1、BC2)のために採用されたスポーツで、1984年ニューヨーク・アイスベリー大会でパラリンピック正式種目となった。当初はすべての選手が同じクラスで競技を行っていたが、96年アトランタパラリンピックから、四肢・体幹に重度の麻痺があり自身での投球が困難な障害のある人(BC 3)、四肢重度機能障害者(BC4)を含め現在の4つのクラスで行われるようになった。

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ボッチャ甲子園では、パラリンピックのクラスに該当しないオープンクラスの選手も参加して「誰もが楽しめる競技」として多様な人が参加できるスポーツの可能性を磨きながら、日本選手権とともに将来のパラリンピック選手を発掘・育成する場として貴重な役割を果たしている。

「なっつみーズ」が初優勝

大会は、全国から史上最多の43校(1チーム3名+控え1名を入れることができる)による予選を勝ち抜いた15校と昨年の優勝校が参加し、16校によるトーナメント方式で行われた。決勝戦まで勝ち進んだのは、千葉県「船橋夏見特別支援学校 なっつみーズ」と東京都「府中けやきの森学園 けやっきーず」。

ボッチャ甲子園で優勝し校歌斉唱が行われた、千葉県「船橋夏見特別支援学校 なっつみーズ」深野翔生・醍醐ちひろ・小林蒼翔・大峯充生 筆者撮影

この頂上決戦は、第1エンドで激しい攻防が繰り広げられたすえ2点を先制された「なっつみーズ」が「まだいけるよ!」と前向きな声掛けで挑んだ第2エンドで5点を大量獲得し優位に立ち、猛追する「けやっきーず」を3・4エンド失点1ずつに抑え、5-4で制して見事優勝を飾った。
X“に投稿した、第2エンド5点目を決めた醍醐ちひろの一投。

パラリンピック日本代表を目標に

本大会出身で日本代表強化指定を受けた選手も多く、エキシビジョンマッチには、高橋和樹(BC3)と唐司あみ(BC4)が登場。またパリパラリンピック代表選手からのビデオメッセージが届けられたほか、昨年優勝した、小平プレミアムズ出身の一戸彩音(BC3)も応援で会場に姿を見せていた。

パリパラリンピック日本代表からのビデオメッセージ。会場にも来ていた一戸彩音とランプオペレーターの父・一戸賢司が画面に映し出された。 筆者撮影

試合後のインタビューでは、優勝した「なっつみーズ」の小林蒼翔(BC3)や、2位の「けやっきーず」の桐悠太(BC3)など二人が、今大会での自身の成長を感じて「次のパラリンピック選手を目指す」と、宣言していた。

大会の意義

今回のボッチャ甲子園は、大会史上最多(43校)のエントリー数を数えた。ボッチャは、パラリンピック種目の中でも最も障害の重い選手が参加できる競技であると同時に、真に誰もが楽しめるスポーツとして世界中に広がっている。パラリンピックを目標とした若手ボッチャ選手の育成や強化、幅広く楽しめる競技の開発は、共生社会の実現に向けたカギとして、大会はその重要性を担っている。
回を重ね、選手の技術も高度化する一方で、教員の忙しさなどにより部活動としてボッチャが行えない学校もあり、加盟校は微増したが伸び悩んでおり、実際には競技人口の増加が難しいという課題がある。

日本ボッチャ協会は、今後さらに多くの選手が参加できる環境を整えるため、地域での指導者育成やクラブチームの創設に力を入れて取り組んでいる。

日本ボッチャ協会・三浦裕子事務局長 筆者撮影

「障害のある若い人たちが競技ができる大会を作らないといけない。(一般、オリの)スポーツ業界では当たり前だと思うんですが、パラスポーツの中に仕組みがない。オリンピック競技では当たり前にやっていることを、パラリンピックの競技でも普通にしましょうと若い人たちに呼びかけています。ボッチャではこういう世界があるっていうのを励みに思ってスポーツをやってもらいたいと思っています」と、三浦裕子事務局長は話す。

そんな日本ボッチャ協会の取り組みが、東京での金メダルを含む日本代表の活動を下支えしている。パリパラリンピックまで1ヶ月を切る日本代表選手、世界での勝利を目指す「火ノ玉ジャパン」の強さの背景として、「ボッチャ甲子園」という日本独自の育成・強化活動の存在に注目せずにいられない。

<参考>
日本ボッチャ協会
https://boccia-koshien.com/

(校正・中村和彦、地主光太郎、そうとめよしえ)

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