関連カテゴリ: Paris2024, イベント, サッカー, ブラインドサッカー, ブラインドスポーツ, 合宿, 夏季競技, 新着, 東京 — 公開: 2024年8月2日 at 1:02 PM — 更新: 2024年8月7日 at 11:11 AM

ブラサカファミリーへの感謝を胸に、最後の1分1秒まで共に戦おう。ブラインドサッカー男子日本代表壮行会が開催される

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7月27日、ルネこだいら(小平市市民会館)にて男子ブラインドサッカー日本代表の壮行会が開催された。選手・スタッフをはじめ地元の小平市行政の関係者、地域の小学生、サポーターなど「ブラインドサッカーファミリー」100名あまりが集まり非常にアットホームな雰囲気で開催された。

参加者全員による記念撮影 筆者撮影

7月27日、ブラインドサッカー日本代表の練習拠点 MAURI!ブラサカパークがある東京都小平市のルネこだいらにて、ブラインドサッカー男子日本代表のパリパラリンピックへ向けての壮行会が実施された。パラリンピックは主催国枠で参加し5位で終えた東京2020パラリンピックについで二度目の参加。前回はコロナ禍ということもあり男子日本代表にとっては初のパラリンピック出場への壮行会だ。代表に選出された2名のGK、6名のフィールドプレーヤー(佐々木ロベルト泉、高橋裕人は体調不良のため欠席)、スタッフを壮行するために、代表には選ばれなかった強化指定選手、地元小平市の市長、市議会議長、教育長、市民に小学生、それにパートナ企業、サポーターなどブラサカを支えてきたまさに「ブラインドサッカーファミリー」が集まった。
冒頭、日本ブラインドサッカー協会 塩嶋史郎理事長がブラインドサッカーが日本に紹介されて以来の20年の積み重ねの中で「過去最強の中川ジャパン」と現代表を紹介。「共に新しい歴史の証人になり、喜びを分かち合いたい」と続けた。

新しい時代の目撃者になれる、とパリパラリンピック参加の意義を強調する塩嶋理事長 筆者撮影

来賓からのエール

エールを送る立場として、まず小林洋子小平市長が「日本代表が、わが町小平で練習して世界でそしてメダルをかけて戦ってくれる、本当にこんな嬉しいことはない。」「どうぞ迫力あるプレーで日本の皆さんを魅了していただければ」と壮行の言葉を述べた。次いで、「(選手の)皆様は社会と世界を変える1人になれる」と松岡あつし小平市議会議長が期待を語った。

LIGA.i 2023第二戦ではプレゼンターも勤めた小林洋子 小平市長 筆者撮影

壮行されるチームから

代表側からは、中川英治監督が2022年1月に就任して掲げた「まず自力でパラリンピック出場を勝ち取る、日本のブラサカの歴史を更新していくということが達成でき、次なるミッションとしてメダル獲得に向けて選手・スタッフ全員でいい準備をしている最中だ」と現状報告した。「ここまでこれたのは先人の普及活動、様々な大会運営や、ロンドンやリオに向けての予選であと1つ引き分ければ、勝てば、というところで、悔し涙を流しても立ち上がった先輩たちの努力があったからこそ」と振り返った。

挨拶をする中川英治監督 筆者撮影

その上で「次の10年、20年の発展のため進んでいきたい」「パリでの最後の試合は、多分5試合目(決勝戦または3位決定戦)になるが、最後のホイッスルがなった時にぜひ(ブラサカファミリー)皆さんと喜びを分かち合えるような結果で終わりたいと思う。その最後の1分1秒まで一緒に戦っていただければ」と思いを語った。また参加した記者からの質問に答えて「選手を支えている家族の皆さんやお子さんたちには、お父さんがメダリストのチームに入っていると思ってもらえるように。また、応援してくれる皆さんが障害者スポーツを応援しているのではなく、メダリストを応援している、支援しているのだと強く思ってもらえるようにしていきたい」と加えた。「日本チームの見どころは?」と聞かれると「攻守の切り替えのスピード、相手の攻撃を防いだ後の攻め上がりのスピード、守備になった時の帰陣、ブロック構築の速さをみてもらいたい」と語った。

中川監督(中央)と代表選手(左から、泉健也、永盛楓人、後藤将起、平林太一、川村怜、鳥居健人、園部優月、佐藤大介)筆者撮影

キャプテンの川村怜は「オリンピックが開幕して、いよいよ始まるんだなぁって、僕もふつふつと想いを感じております。ここにいる皆さんと、そして日本全国のブラインドサッカーファミリーの皆さんとともに、パリパラリンピックでメダル獲得を目指して戦いたいと思います。選ばれた日本代表として、自覚と覚悟を持って挑みたいと思います」と決意表明した。

決意表明する川村怜キャプテン 筆者撮影

東京パラリンピックに引き続き、今回もU-23代表、なでしこジャパンと同じユニフォームを着てピッチに立つ(JFA「共に掴もう、最高の瞬間を」)ことを聞かれると、それぞれが以下のように口にした。「憧れの日本代表ユニフォームを着てプレーできて本当に嬉しい(川村)」「身の引き締まる思い(永盛楓人)」「自分の名の入ったユニフォームで試合に臨むことに感動している。ただ、結果をもとめて挑みたい(後藤将起)」「ユニフォームに恥じないプレーができたらいい(平林太一)」「自分も戦う一員であることを改めて実感した(園部優月)」「このユニフォームを着て全力でプレーすることにより皆さんも楽しんでいただきたい(鳥居健人)」「心から楽しんでプレーしたい(佐藤大介)」「テレビで見ていたユニフォームを自分たちが着ていることで本当に身が引き締まる(泉健也)」

同級生にユニフォームのことを羨ましがられていると語るまだ高校生の平林 筆者撮影

サポーターから

ついで、参加者から代表チームに対して記念品の贈呈がされた。まず、2005年から日本代表を応援しているサポーターのサッカー団体infinityを代表して清都俊仁さんからは横断幕と、選手一人一人に名前入りの日の丸が送られた。

サポーターから贈られた横断幕を受け取る代表 筆者撮影

小平市小平第三小学校4年生からはメッセージビデオと寄せ書き入りの日の丸が贈られた 筆者撮影

最後に参加した全員での記念写真を撮って壮行会は終わった。その後、MARUIブラサカ!パークに場所を移して、代表の強化合宿が公開されが、あいにく雷雨のため早々に切り上げられた。
その後、日本代表は8月7日に日本を出発して、キャンプ地のイギリス、ヘレフォード(2015年に遠征)に向かう。現地で2週間ほどトレーニングを積み21日にパリに移る。中川監督によれば「ゲームの中ではやったことしか出せないので、そのための下地づくりとしてコンディションをあげていく。最後はコンディションを調整して、パリの地に入った時に(すり鉢状の13000席のある競技場の)環境に適用できるように体もマインドもしっかりと準備していく」予定だ。

自力出場への道

自力でのパリパラリンピック出場権獲得の道は長かった。ブラインドサッカーがパラリンピックの種目に採用されたのが2004年アテネ大会。協会設立が2002年で当時は国際大会に参加することに意義があるというレベルだった。強化が始まりパラリンピック出場が本格的に目標になってきたのが2012年のロンドン大会だ。
ロンドン大会の出場権のかかる仙台で開催されたIBSA アジア選手権2011で日本は予選第三戦、引き分ければ出場権を獲得できるところでイランに0-2で敗れて出場をのがした。続くリオ大会に向けてIBSAアジア選手権2015が東京で開催された。日本は初戦で中国に0-1で敗れ、ついでイランに引き分け。その後3連勝するも、またしても中国、イランとの結果が響き決勝戦に進めず出場を逃した。
東京大会は、自国開催により初出場を果たす。当時の日本の世界ランキングは12位。大会は、ブラジルが4大会連続での優勝。以下アルゼンチン、モロッコと強力なストライカーを擁するチームが上位をしめた。日本は5位-6位決定戦でスペインを1-0で下し、5位で終わった。

スペインとの5位決定戦、川村からの浮き球のクロスを直接ゴールに蹴りこむ黒田智成 写真・秋冨哲生

パリ大会への道のりもまた平坦ではなかった。最初のチャンスは優勝すれば出場権を得るIBSAアジアオセアニア選手権(2022年11月インドで開催)。準決勝でタイに敗れ3位に終わり、世界選手権への切符を手にした。IBSA世界選手権(2023年8月イギリスで開催)が出場権を獲得する最後のチャンス。アメリカ、ヨーロッパ、アジアオセアニア、アフリカの各地域の選手権を勝ち抜いた16カ国が集まった。既に出場権を得ているフランス(開催国枠)、トルコ(ヨーロッパ枠)、モロッコ(アフリカ枠)、中国(アジアオセアニア枠)をのぞいた上位3つに入ればパリへの出場権を獲得できる。準々決勝で中国に勝てばほぼ確定というところを日本は一つのミスからゴールを決められて0-1で敗れ、順位決定戦に回った。最終戦で宿敵イランを1-0で倒し5位の座を確保した。最終順位は以下の通り。
1位 アルゼンチン
2位 中国(アジアオセアニア選手権優勝)
3位 ブラジル
4位 コロンビア
5位 日本

IBSA世界選手権2023準々決勝で中国に敗戦後の挨拶をする代表。頭を上げられないのは後藤。 筆者撮影

出場権を確保しているのは中国だけなので、パリへの切符を手にしたのは4位まで、日本は出場権を獲ることはできなかった。

だが、日本には最後の望みが残されていた。この大会の3か月後に開催されるパラパンアメリカン競技大会2023で、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアの3チームのどれかが優勝すれば、優勝国はアメリカ大陸枠での出場となり、残りの3枠に日本が入り出場権を獲得できる。11月23日、上記3カ国のうち2カ国での決勝戦がはっきりしたことで日本のパラリンピック出場が確定した。滑り込みの出場権獲得であった。

パリの本番は

パリのキックオフは9月1日 18:30(日本時間)にコロンビアと。その後、モロッコ、アルゼンチンと予選グループリーグが続く。東京パラリンピック以降、全ての国と一度は対戦し、傾向を掴んでいる中川ジャパン。残りの1ヶ月でどう調整してエッフェル塔の下のピッチに現れるか今から楽しみだ。

各選手に贈られた名前入りの日の丸 筆者撮影

最後に、協会では8月4日まで、このパラリンピック直前最終キャンプの資金獲得のためのクラウドファンディング を実施しているが、目標金額に達成していない(8月1日時点)。まだ参加されていない方はぜひ申し込んでほしい。ここでも最後の1分1秒までブラサカファミリーとして日本代表を後押ししよう。

(校正・中村和彦、佐々木延江、そうとめよしえ)

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