世界を相手に戦うトライアスリートたち
選手は、世界ランク(Paralympic Qualification Rankings)上位で代表に選出された秦由加子(6位)、木村潤平(9位)、そして招待枠で推薦された東京2020パラリンピック銀メダリスト宇田秀生、銅メダリスト米岡聡の4名である。パリでのレースに向けた意気込みを語った。
秦由加子(女子PTS2):片足大腿義足のクラスで世界ランク6位で代表入り。東京大会に続き3度目のパラリンピック出場となる秦は、東京大会後、競技人生を賭けた右足の手術に成功。秦は、痛みのないランを手に入れ、5月のワールドトライアスロンパラシリーズ横浜では強豪相手に3位、日本人では唯一のメダルに輝いた。
「パリの石畳」を想定した不整地トレーニングでバランス感覚を培った。Hailey Danz、Allysa Seely、Melissa Stockwellらのアメリカ勢がひしめく女子PTS2クラスで、「彼ら全員が私のライバルです」と、語った。練習を武器に、表彰台を狙う。
木村潤平(男子PTWC):アテネ大会(2004年)から水泳で3大会、トライアスロンに転向しリオ大会(2016年)から2大会出場経験を持つ超ロング・チャレンジャー。ギリギリ9位での代表入りを果たし「感謝の気持ちを力に変えてレースに挑む」と話す。
宇田秀生(男子PTS4):東京大会銀メダリスト。ランキング9位以内に入れず一時は落胆したが、招待枠での出場が決定。「神様からの招待状」を手に、再び世界の頂点を目指す。
米岡聡(男子PTVI):宇田選手と同じく招待枠での出場。世界のレベルアップに喰らいつき、レベルアップを図ってきた。「チャレンジャーとして失うものは何もない」と力強く語る。
レースを制するのは誰だ!?
パラトライアスロンは、オリンピックの半分の距離、スイム750m、バイク20km、ラン5kmの3種目を連続で行う。パリ大会では、市中心部のセーヌ川がスイムの発着点となる。水質問題が懸念されているが、選手たちは万全の対策で臨む。クラスは、「シッティング(座位)」、「スタンディング(立位)」、「ブラインド(視覚障害)」の3つに分けられ、その程度によりさらに分類されている。そのクラスごとに、義足やハンドバイク、タンデム、車いすレーサーなど多様な機材を駆使して競い合うことになる。
パラトライアスロンの歴史と魅力
オリンピックのトライアスロンはシドニーオリンピック(2000年)から、パラリンピックは、2010年にリオパラリンピック(2016年)での正式種目として認定された。日本のパラトライアスロンは、JTU(日本トライアスロン連合)が、オリンピックとパラリンピックの一元化組織であり、トップから市民アスリートに至るまで障害の有無に関わらず選手がともに競技に取り組む環境を提供している。オリパラのエリート競技の側面と愛好者による大衆スポーツの側面があり、競技者を世界中に増やしている。パラリンピックのトライアスロンは富川理充パラトライアスロン ハイパフォーマンスディレクターの指導の下、障害のあるアスリートの頂点として選手の発掘と強化に取り組んできた。
目標は「金メダル1個を含む複数のメダル獲得」
富川ディレクターは、「4名の選手が力を発揮し、金メダル1個を含む複数のメダル獲得と、メダル獲得者を含む4名の入賞という目標を達成できるよう、全力でサポートしていきたい」と語った。
選出された4名は全員東京2020パラリンピックを経験している。ロンドン大会後、13年ぶりのヨーロッパでの大会ということもあり、フランスはもちろん、近隣諸国、ライバルの国々のアスリートの強化が目覚ましいパリへ挑む。
JTU岩城光英会長は「パラトライアスロンは、タイムや、世界最高記録を争うものではなく、同じ障害を持つクラスの選手たちと着順を競い合い、素晴らしい友情を確かめ合える競技」と表現し、あらためて、多様な障害のある選手の競争が魅せてくれる、勇気と感動を確信してサポートに励む決意を語っていた。
9月1日、2日にパリ、セーヌ川を舞台に熱い戦いが繰り広げられる。パラトライアスロン日本代表選手の挑戦に、ぜひご注目いただきたい。
(校正・地主光太郎、そうとめよしえ)