東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、7月13日と14日に横浜国際プールで「第3回インクルーシブ水泳競技大会」が開催される。この大会は、障害の有無や年齢、競技レベルに関わらず、誰もが参加できるインクルーシブスポーツの理念に基づいている。
大会の起源と目的
この大会は、東京2020オリンピック・パラリンピックで横浜国際プールが英国水泳チームの練習会場となったことを契機に、イギリスではオリ・パラが一元化されていることを参考に企画されたものだ。インクルーシブスポーツの理念を日本でも広めるために始まった。
大会の見どころ
特に注目すべきは、パリ2024パラリンピック日本代表に内定しているパラ・スイマーたちだ。100m平泳ぎでパラリンピック世界記録を保持する山口尚秀の世界記録に期待が高まる。大会2日目には、日本代表水泳チームの壮行会が予定されており、大会2日間を通じてパリ2024に向けた選手たちの意気込みが感じられるだろう。
インクルーシブの理念を深めながら、横浜国際プールが主催、日本水泳連盟、日本パラ水泳連盟、日本知的障害者水泳連盟、日本デフ水泳協会、日本マスターズ水泳協会など水泳競技団体が協力して開催。障害の有無にかかわらず多様なスイマーがともに競技する場を提供し、互いに刺激し合う機会を創出している。
横浜国際プールの歴史と功績
横浜国際プールは、長野パラリンピックと同じ1998年に開業した。2001年には第4回知的障害者水泳選手権が開催され、以後毎年開催され6月30日に27回目の大会を開催した。さらに日本最高峰のジャパンパラ水泳競技大会も2016年から行われ、さまざまな障害のあるスイマーがこのメインプールで活動、同プールの運営や支援に関わる多くの人々の手で、日本のパラ水泳の世界での活躍が支えられている。
国と自治体の取り組みと支援
2011年にスポーツ基本法が改正され、障害者のスポーツが厚生労働省から文部科学省に移管された。横浜市は、障害者のスポーツを健康福祉局が管轄する体制を維持しながらも、横浜国際プールでの大会運営においては、日本水泳連盟と連携しオリパラ一元化を模索してきた。また、パラ水泳は、WPS(世界パラ水泳)公認で大会を開催しており、東京2020に向け国際大会も複数開催、国際的な視野で活動しており、パラスポーツ全体の発展に中心的な役割を果たしている。
横浜国際プール廃止案への懸念
横浜国際プール・メインプールの廃止案が盛り込まれた「横浜国際プール再整備事業計画(素案)」が横浜市から6月に発表され、多くの関係者や選手にとって懸念事項となっている。この計画案には、東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーを維持継承する課題が掲げられているが、国際大会が開催されるパラ水泳においては、すでにさまざまな障害のあるスイマーが国際レベルのサポートを受けられている。この20年で競技運営のノウハウが積み重ねられ、今からここでパラリンピックを開催する、と言われても可能な知見がある。これがレガシーと言わずして何をレガシーというのか。
未来に何を残すのか
本大会は、障害の有無にかかわらず多くの選手が参加し、共に競い合う場としての重要な一歩を踏み出している日本パラ水泳連盟・河合純一会長も存続を強く訴えており「選手たちにもここで育んできた思い出がある。それを1から別の場所で構築するのは難しい」と述べ、今後もその価値と意義を継承することを求めた。
この大会を通じて、今後の日本のスポーツの発展に繋がることが期待されている。国際都市横浜のスポーツと福祉の政策のあり方が今、岐路に立っているのではないだろうか。
(編集協力・杉浦裕樹 校正・そうとめよしえ)