「素晴らしい気分です。1500mは初めての公式レースでした。レース前は少し不安で、できるだろうか、ついていけるだろうか?と思っていました。しかし、やれるだろうと、佐藤選手についていきました。彼が調子を崩し始めたのを見て、残り300メートルは自分の得意な距離だったので、全力を出しました。それが金メダルにつながりました」
神戸2024パラ陸上世界選手権、最終日(5月25日)、ベルギーのマキシム・カラバンはT52の最後のレースも勝利し3冠を達成したあと、日本の記者たちに囲まれてレースの感想を話した。
すでに、400m、100mで佐藤友祈(モリサワ)と競い合ってきたベルギーのマキシム・カラバン。ついに佐藤が世界記録を保持する1500mT52(車いす)決勝の日を迎えた。この距離はパリパラリンピックの種目になく、佐藤との対決は初めてになる。
レースが動いたのは残り300mでラストスパートをかけたマキシムは、あっという間に佐藤を引き離してフィニッシュした。T52の100m、400m、1500mで3冠を達成した。
「ベルギーチームで話し合い、今日はタイムというより、1位、金メダルを目指して走った」とマキシムはレース戦略について語った。
体力を温存しているように見えたが、という記者の問いに「そうです、それがスポーツです。佐藤選手が先頭に立つのを見て、彼の背後につこう、風を避けられると考え、チャンスが来たら前に出ようと決めていました。それがうまくいきました」と答えるマキシム。
世界記録を持つ佐藤は、「記録を狙ってくると思っていましたが、肩透かしにあいました。ちょっと口が悪いけど、ふざけんなよ!って。風が強く、風除けに使われ続けたら最後まくられるので、1回横に道を開けたけど、彼はかたくなに僕の後ろで走っていた。まだ自分一人では僕の持っている世界記録には届かないんだろう」
マキシムはリュージュ(ベルギー)に練習環境を置いているが、パリパラリンピックの競技場と同じ、モンド社製のトラックが敷かれており、練習環境は最高に良いという。
パリでは1500mT52が種目からなくなり、マキシムと佐藤とのこの距離での試合はしばらくないが、二人はパリパラリンピック、100mと400mで再び競い合う。パリ、そして次の1500mT52を競う日を、神戸の観客も楽しみにしていることだろう。
(編集)佐々木 延江 (取材協力)地主 光太郎