神戸2024パラ陸上世界選手権・6日目(5月22日)、男子1500mT54(車いす)決勝。このクラスで世界的に強く、ファンの人気も高い絶対王者、スイスのマルセル・フグ(HUG Marcel)が不在だったことはこのレースに大きな影響を与えた。他の種目も含めて神戸に出場する選手、しない選手それぞれが今夏のパリを目指す準備をしている。
瞬発力のあるスタートで中国人3選手が飛び出し、レースを優位に進めた。最後までJIN Hua(CHN)がトップを守りきり、大会記録の2:54.85で優勝した。
東京パラの800mT54で銀、400mT54で銅の実力者・DAI Yonqiang(CHN)がJINに続き、中国勢がワンツーを決めた。3位はこの競技の強豪国・タイのSaichon KONJENだった。
中国のJIN Huaは、「T54車いすクラスで中国に新しい歴史を作った。この快挙を達成できたのは、チームとして努力した結果。パリパラリンピックまで100日切った期間で素晴らしい仕事ができて良かった」と今回の快挙について語った。
予選で「(ドイツの)フグがいないからこそ、タイム勝負ができると思う」と話していた鈴木朋樹(トヨタ自動車)。予選のレースは1つの集団でスローペースだった。決勝は、実際、鈴木の予測通り大会記録がマークされる高速レースとなった。
鈴木はレースを楽しめているか!?
日本の鈴木は「スタートの位置取りは狙い通りだったが、中国の加速力に対応しきれなかった。難しいポジション取りに力を使ってしまった。(昨年杭州での)アジアパラでも同じような展開だった。ラスト一周で離れ、対応できる力を持ってなかった。スピードはもっと磨きをかけ、こういうレースで落ち着いて対応していく必要がある」と話していた。
パラリンピックの華やかなワンシーンを演出するレースとして人気のある、1500mT54のレースだが、日本が低調の今、ファンはどういうところを捉えたら良いか?
そんな筆者の質問に、2004アテネ・2012ロンドンパラリンピック日本代表で、NHKコメンテーターを務める鈴木の先輩の花岡伸和氏は、「パリへ向け鈴木がすべきことは、競争する楽しさをどこかで再確認することかもしれない」と。
かつて、花岡氏や樋口政幸ら先輩が世界と競い合い楽しむ姿を追う中で、鈴木は成長してきた。そのベテランが引退していくなか、今度はライバルや友とともに先輩を超え、鈴木自身が成長を果たしていく番だ。
(編集協力・そうとめよしえ)