神戸2024パラ陸上世界選手権大会がついに開幕した。東アジアで初となるパラ陸上最高峰の世界選手権であり、17日午前、神戸ユニバー記念競技場(神戸市須磨区緑台)で競技の幕を開けた。
元々は、2021年に開催予定であったが、新型コロナウイルスの影響で2度の延期を余儀なくされ、3年遅れての開催となった。東京2020パラリンピックでは無観客だったパラ陸上のスタジアムには、午前中だけで11,278人が観戦に訪れている。
パラスポーツにおいて神戸市は、1989年・第5回フェスピック大会(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会/現在のアジアパラ競技大会)を開催した経験がある。2000年シドニーパラリンピックに向け、市職員が障害のある人の水泳クラブを結成するなど、他にもパラスポーツへの取り組みがあり、多くのパラリンピアンが拠点とする都市でもある。
また、神戸市は、阪神・淡路大震災を経験し美しく復興した都市であり、世界のパラアスリートによる大会を開催することで、世界の選手たちの前で、大会運営を通じて地域社会の絆を確認する機会となっている。
大会は、今夏に控えるパリパラリンピックにむけ、長い時間をかけて強化・育成されてきたヨーロッパ勢が成長している。また、リオ2016パラリンピックを経て選手への注目が熟成されつつあるブラジルの強さが際立つ。アジア、アフリカからも多くの選手が出場し、磨いてきたパフォーマンスがぶつかり合う。
開会式は午後2時にスタートし、阪神淡路大震災での被災者激励演奏を機に演奏家となった木村優一氏と須磨翔風高校による和太鼓演奏が行われ式典前の演技として観客を魅了した。
続いて、神戸市生まれの全盲の声楽家、バリトン歌手の時田直也氏による国歌独唱が、その力強い歌声で会場を包み込んだ。
震災追悼・チャリティーコンサートやふれあいコンサートに多数出演しており、視覚障害を持ちながらもその力強い歌声で多くの人々を勇気づけている。
冒頭で神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会組織委員会会⾧・増田明美氏が、「ハロー!エブリワン!!」と呼びかけると、気のおけない雰囲気が会場を一つに包み込んだ。
兵庫県知事の齋藤元彦氏、WPA代表のポール・フィッツジェラルド氏がそれぞれ挨拶を行い、大会の意義や期待について語った。
秋篠宮皇嗣殿下もお言葉を述べ、選手たちへの激励と共に共生社会の重要性を強調された。
選手、審判、コーチの宣誓の後、神戸市長の久元喜造氏が開会を宣言した。
東京から神戸へ、パフォーマーたち
歓迎演技では、東京2020パラリンピック・セレモニーで多様性を輝かせた神戸出身のアーティストが、都市の魅力を表現するダンスパフォーマンスを披露した。この開会式に参加したアーティストたちは、パラスポーツと神戸に深い想いとそれぞれのストーリーを持っていた。
車椅子ダンサーのかんばらけんた氏は、東京2020パラリンピックに向けた、リオ2016パラリンピック閉会式の引き継ぎセレモニーから東京2020のパフォーマーとして花開いたアーティストで、神戸市出身だ。
全日本高校・大学ダンスフェスティバル(神戸)文部科学大臣賞を3回受賞した神戸野田高校ダンス部によるダンスパフォーマンスも神戸の今を象徴するエネルギーを放っていた。
これに加えて再び木村優一氏と須磨翔風高校の和太鼓演奏が行われ、観客を感動の渦に包み込んだ。
木村氏は、国境やジャンルを超えた音楽活動を展開している。
国際的に活躍するダンスチーム「N’ism」もまた東京大会のセレモニーを経験した神戸市出身のダンスチームである。NORI氏がプロデュースし、神戸を拠点に世界で活躍している。
「神戸という地元で、世界的なセレモニーを行えることは特別で、嬉しい。今回のパフォーマンスには、多様な人々が一体となり、共に踊ることで人々のつながりと共生の重要性を表現したいと考えました。東京を経ていますが、神戸らしさを伝えています。震災からの復興を象徴する音楽や振り付けを取り入れました」とNORI氏は語っていた。
多様な背景を持つアーティストたちが一堂に会し、神戸2024パラ陸上世界選手権の開会式は、選手たちのスポーツへの想いが集うところで、アートとスポーツが溶け合うひとときとなった。
104カ国・地域から1073人の代表選手が参加し、トラックやフィールド競技の計168種目で熱戦を繰り広げる。これから9日間は、多くの人々に感動と希望をもたらすことだろう。神戸の地で繰り広げられる熱いドラマに、世界中の注目が集まることを願う。
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5月17日 開会式 写真・中村 Manto 真人
(編集協力・丸山裕理 校正・そうとめよしえ、地主光太郎)