日向楓(中央大学)と田中映伍(東洋大学)の二人は、50mバタフライをメイン種目に、同じ両腕欠損の障害で東京2020パラリンピック後に競い合うようになった。日向は東京2020パラリンピック、バタフライで7位、2022年の世界選手権銀メダルを獲得し、田中が日向を追うように実力をつけて迫り、共にパリパラリンピック日本代表として選ばれた。
2024ジャパンパラ水泳2日目の5月4日、男子100m自由形S5予選で、田中が01:19.54をマークし、これまで日向がキープしていた日本記録を更新したが、決勝では、日向が自己ベスト01:18.11を出して日本記録を奪還、優勝した。ライバル2人で2つの日本記録を更新したレースだった!
レース後、日向の振り返り
「マデイラでの世界選手権ぶり、2年弱ぶりの自己ベストでした。予選で田中選手に日本記録を取られましたが、決勝で取り返すことができた。レース後、電光掲示板の記録を見て、やってやった!と久しぶりに思いました。予選で田中選手が日本記録を塗り替えていなければ、自分もレースプランを変えることもなく、決勝で自己ベストが出ることもなかった。田中選手がベストを出してくれたことで、僕も気持ちが入ってレースプランもハマったと思います」
「(唯一キープしていた日本新を奪われショックはあったようだが)みんなに「自信持て」って言われ、自分を信じて行こうと思いました。結果として2秒近くタイムをあげることができたのは、これまでビデオでチェックし無駄のない泳ぎを目指してきたが、結局ベストが出なかったので、この決勝では(練習はしてなかったが)呼吸でリズムを作ってできるだけ楽をして泳ごうというレースプランで前半から飛ばした」
「レース後、(日本代表チーム・ベテランの)鈴木選手に「やればできるじゃん」って声をかけられて、今までずっとマデイラからベストが出てなく疑心暗鬼になっていたところがあると思うので、パリに向けては自信が持てるよう練習を重ねて実力でトップ選手に勝っていけたらと思っています」
田中の振り返り
「予選は攻めていけた、自己ベストが出せて、目標としていたMETを切ることができた。決勝では前半からばててしまった。まだ100mを1日2本泳ぎ切る体力がない。日向選手とは、同じぐらいのタイムでお互い意識しながら、どちらが勝つか負けるかわからない二人なので、気を引き締めていけると思います」
(校正・地主光太郎)