4日間にわたりAsueアリーナ大阪(大阪市)で開催された2024 IWBF女子車いすバスケットボール最終予選が4月20日最終日を迎え、「クロスオーバー戦」が行われた。
3日間のグループ戦の結果、グループAは ドイツ、オーストラリア、タイ、アルジェリアの順位、グループBはカナダ、スペイン、日本、フランスで、それぞれ組み違いの1位と4位、2位と3位が対戦して、4試合で4つのパリ行きのチケットを争った。
最初の3試合は上位チームがパリ行きを決める
第1試合から第3試合までは以下の通りで、それぞれグループリーグで勝ち越したチームがパリ行きの切符を手にした。
第1試合 カナダ(グループB 1位) 88-30 アルジェリア(グループA 4位)
第2試合 スペイン(グループB2位)76-35 タイ(グループA3位)
第3試合 ドイツ(グループA1位)58-25 フランス(グループB 4位)
日本は最後の席をかけてオーストラリア(グループA 2位)と激突
第1クォーター、リバウンドをとった網本麻里(4.5 カクテル)からのパスをキャプテンの北田千尋(4.5 カクテル)がうけ、そのまま相手を振り切り独走してシュート、ゲームの口火をきる。これまでの3試合ではあまりみれなかったロングパスからの速攻で先行する。岩野博ヘッドコーチが「3試合で自信を深めた」と語るディフェンスでは、チーム1の得点(3試合で55点)を決めたジョージア・モンロー・クック(4.5) をシュート1本2点に抑え、13-4でこのクォーターを終える。
続く、第2クォーターでもオーストラリアから24秒、8秒のファールをとるなどディフェンスが引き続き好調でオーストラリアの得点を3点に抑えて25-7で折り返す。
第3クォーターではジャス・クロンジェ(4.0)、モンロー・クックがシュートを決め、盛り返すとかと思われるも、柳本あまね(2.5 カクテル)が3ポイント、2ポイント、網本がフリースローを合計4つさらに2ポイントを決め、36-13でリードを広げる。
第4クォーターは北田が「このままのスコアではパラリンピックの本番で1勝もできない」との危機感から気合いを入れなおしたと振り返る。自らフリースロー2つ、残り24秒の最後のワンプレーで3Pを決めてゲームを締め括った。50-26でオーストラリアを破り北京以来の自力でのパリパラリンピック行きを決めた。
試合後のセレモニーでキャプテンの北田は「東京パラリンピックで男子が2位になって増えたファンを、次の世代に繋げていくという最低限の仕事ができた」と率直に安堵の気持ちを述べた。
岩野HCはサポーターを前に「パリではメダルをとります!」と力強く宣言した。岩野HCは、合宿を訪ねてくれたオリンピック男子バスケットボール日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスから「メダルの色を決めて進んでいくことが大切」とアドバイスをうけたと語り、「(目標に向けて)高い山は3つ、4つあるが登りきれない山ではない」と改めて強調した。
最終予選というシステムは「道半ば」
男女とも、パリパラリンピックを戦う、8つのチームが確定した。男子は、イギリス、スペイン、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダと、ヨーロッパゾーンから5カ国、アメリカゾーンから2カ国、アジア・オセアニアから1カ国。
女子は、イギリス、オランダ、アメリカ、中国に、カナダ、スペイン、ドイツ、日本と、ヨーロッパからの出場が半数を占めることになった。 男女とも南半球からは1カ国も参加しない大会となることが確定した。
リオ大会、東京とアフリカゾーンから出場していたアルジェリのアハメド・タグイーシェヘッドコーチは「今回の変更(出場枠が10から8へ削減)により、アフリカから出場することはできなくなった。次回にむけアフリカからの枠を確保するために、頑張らなくては」と語った。
また、パリパラリンピックのホスト国であるフランスも、母国大会に出場をもたらすことができなかった。フランスチームのヘッドコーチ、フレデリック・ギュヨーは、「パリにはそれに相応しい国がいくべきで、フランスチームはそうではなかった」と謙虚に語った。
IWBF(世界車いすバスケット連盟)のウルフ・メーレンス会長が「ベストのチームを選ぶためこのような選考方式とした」と表現した最終予選の結果、多様性という観点では今後の改良の余地があるシステムといえるかもしれない。
次は、パリ!
さて、8月29日に開幕するパラリンピックでのトーナメントにむけて、日本代表の「地獄の練習(岩野HC談)」が続く。岩野HCが課題として再三あげたのがシュートの成功率。特に欧米選手との間の体格差があるため大切になるのがアウトサイドからのシュートだ。今大会を振り返ると、北田、網本、柳本のフィールドゴール成功率は30%台。他チームのエースと目される選手が軒並み50%を超えていた。残り4ヶ月で改善して本番をむかえる必要があるだろう。そうなった上で、ぜひ、男子の分も背負い、パリで新たな歴史の1ページを刻んで欲しいと願う。
(写真・薮功也 校正・佐々木延江、丸山裕理)