関連カテゴリ: チームジャパン, フランス, 国内大会, 夏季競技, 新着, 水泳, 観戦レポート, 静岡 — 公開: 2024年3月11日 at 1:52 AM — 更新: 2024年10月27日 at 7:25 PM

パラ水泳選考レース2日目、木村、富田、鈴木、木下が派遣A突破!

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パラ水泳のパリパラリンピックへの日本代表を決める選考レース2日目について派遣A・B突破状況。

派遣A・Bのタイムを突破することで、22枠のパリパラリンピックへの切符を手にしようとトップ・スイマーらが一発勝負に挑む2日目。新たに木村敬一(100mバタフライS11)、富田宇宙(100mバタフライS11)、木下あいら(200m個人メドレーS14)の3名が派遣Aを突破。田中映伍(50m背泳ぎS5)、由井真緒里(200m個人メドレーS5)、南井瑛翔(200m個人メドレーS10)の3人が派遣Bを突破した。

以下、2日目(3月10日)の派遣突破者を競技別に紹介。

100mバタフライ、木村・富田が派遣A突破、山口、木下が派遣B突破

100mバタフライS11を泳ぐ、木村敬一(奥・東京ガス)と富田宇宙(EY Japan) 写真・秋冨哲生

男子S11(全盲)の木村敬一(東京ガス)は01:03.03で、ライバルの富田宇宙(EY Japan) は01:03.99で派遣Aを突破した。
木村は「前半は取り組んでいる泳ぎを自分の中ではできたと思う。後半まではもたず、まだまだ完成度は低いようだ。この1年フォーム改善に取り組んできて自分の知らなかった世界を泳ぎを通じて知ることができた。やれるかやれないかの前に、(全盲の)僕ができていなくて健常の人がやれていることがたくさんあるということを教えてもらえた1年。しっかりと自分のものにしていくには、まだまだやることがある」と、オリンピアンの星奈津美コーチにトレーニング、タッピングなどで関わってもらい、技術だけでなくトップスイマーとしての思考を学ぶ時間になっている」と話していた。

200m個人メドレーS11でスタート前の富田宇宙(EY Japan) 写真・秋冨哲生

富田は「最低限の目標である派遣Aを突破できてほっとしている。パリでのメダルの最低ラインだと思います。コンディションがよくない、疲れも残る難しい状況では、全体のなかでタイムを収めるレースとなった。いいタイムではないが、コンディションを踏まえこの大会のなかでは悪くないタイムと考えている。泳いでいる間、木村選手が前に横に感じられたので速く泳げているのかなと感じたが二人とも遅かった(笑)。ライバルがいてお互いにパリまでしっかり切磋琢磨して、二人で頂点に向かう姿を見せていきたい」と話した。

女子S14(知的障害)の木下あいら(三菱商事)は、1:08:09で泳ぎ派遣Bを突破した。

100m平泳ぎが専門の山口尚秀(四国ガス)は、100mバタフライに出場し自己ベスト(57.11)に近い57:18で泳ぎ派遣Bを突破した。

山口尚秀(四国ガス)が100mバタフライS14に出場し派遣Bを突破した。 写真・秋冨哲生

2日目の100mバタフライ、100m自由形に出場し今大会のレースを終えた山口は、「頭痛ぎみだったがしっかりと出し切った。昨日の平泳ぎでは世界記録に近いタイムで泳げた。バタフライ、自由形でもそれなりに良いタイムでおよげた。力みすぎない泳ぎで、大きなストロークで推進力をだそうという泳ぎをした。パリにむけては、出るからにはベストパフォーマンスを出したい。今回は頭痛があったので本番は万全な状態で挑みたい。選手村にエアコンがないという話もあるが、万全な状況で100m平泳ぎではベストをめざしたい」と、あらためて今回も情熱を傾ける100m平泳ぎで世界記録更新・金メダルをめざすことを口にしていた。

50m平泳ぎは鈴木が派遣Bを突破

50m平泳ぎSB3スタート前の鈴木孝幸(GOLDWIN) 写真・秋冨哲生

鈴木孝幸(GOLDWIN)は、午前の50m平泳ぎSB3で00:52.75で派遣Bを突破。午後の100m自由形S4では01:23.13のタイムで派遣A突破した。
100m自由形について「できれば22秒台前半を出せたらよかったと思います。世界選手権より0.2秒くらい遅かったが(泳ぎの)内容は良いものになった。パリに向けて今後は6月まで泳ぎこむ時間を作り、その後は瞬発力をあげる練習をしてレースに向けた調整に入っていきたい」と感想を述べた。
また鈴木は、50m平泳ぎSB3について、「パリでは平泳ぎでメダルを取っていきたい。平泳ぎは(現在)ベストから4秒遅く、東京から比べても3秒遅いタイムだが、掻き数が健常者と比べても非常に多い泳ぎ方で、50mといえども一と掻きのクオリティをあげるだけで2〜3秒が簡単に変わってくる。本番に向けて調整をして、また50秒を切れるところまでもっていき49秒前半、48秒でしっかりとメダル争いをしたい」と見据えていた。

50m背泳ぎは田中が派遣Bを突破

2日目、気持ちをあらたに50m背泳ぎS5をスタートする田中映伍(東洋大学) 写真・秋冨哲生

男子S5田中映伍(東洋大学)00:37.43で派遣B突破。「昨日は余裕だと思っていたバタフライで37秒というよくないタイムでやばいなと思っていたが、今日の背泳ぎでは最低目標の派遣Bまでは出せたので安心しています。昨日は緊張して眠れなかったが今日は眠れて良い状態に(身体を)もっていくことができた。鈴木選手から、やるしかないからとりあえず突っ込め、木村選手からもお前ならできるからと言われ、一緒に練習する仲間からの声かけが大きく、前半から攻めるという強みが出せたと思います。パリに向け日向選手もNTCで練習することになった。二人で目指していきたい」

200m個人メドレーは木下が派遣A突破、南井・由井が派遣B突破

200m個人メドレー女子では、SM14の木下あいら(三菱商事)は2:25.92派遣Aを突破。昨年8月の世界選手権で銀メダルを獲得した泳ぎでもポイントになった平泳ぎが今回もポイントになったようだ。

200m個人メドレーSM14で派遣Aを突破した木下あいらは応援に応えて手を振る 写真・秋冨哲生

「目標にしていた派遣Aを切れよかった。平泳ぎと自由形でバテてしまうことがあるのを今日はバテずに泳げました。緊張が大きく、緊張したままレースに出ていました。いつも通りの泳ぎができるよう、焦らないように心がけた。パリに向けてこれからもっと強化して一番いい色のメダルを取りたい」
初日、最初の200m自由形は緊張しすぎて良いタイムが出なかったという木下だが、終盤の200m個人メドレーでは良い泳ぎができた。この1年で初の海外遠征から世界選手権と一挙に駆け上り、驚きながら自身の成長を受け止めてきた木下にとって200m個人メドレーは得意種目となっていた。

女子200m個人メドレーSM 5のレースを終えた由井真緒里(上武大学) 写真・秋冨哲生

女子200m個人メドレーSM5では、由井真緒里(上武大学)が3:43.33で派遣Bを突破した。
「今まで一番緊張したレース。(この種目に)力をいれていたが、昨日の不調もあり緊張してのぞんだ。名前を呼ばれたとき、観客席から声援があり吹っ切れたというか、力んでも良いタイムでないと平常心になることができた。4種目それぞれの強化、体力の強化もしてきたが泳ぎの練習の効果はあった。パリでは東京より上の順位、良いタイムで納得いく結果を目指して頑張ります」(由井)

200m個人メドレーS10を泳ぎ終えた南井瑛翔(近畿大学) 応援席からの歓声でタイムが切れたと知る。 写真・秋冨哲生

男子200m個人メドレーSM10で自身のもつアジア記録を更新する02:18.03で派遣Bを突破した南井瑛翔(近畿大学)は、「このレースを目標に先月オーストラリアで1ヶ月間の合宿をしました。しっかりスタミナがついて(現地での)ビクトリアオープンでベストが出せたので、これはいけるなと自分の中では思っていました。平泳ぎと自由形で0.7秒タイムが上がっていた。今日は(終盤になるこのレースまで)決めきれない時間が続きプレッシャーがあったなかで、(大学の)山本コーチから落ち着いていけば大丈夫、という声掛けがあり、リラックスできた。背泳ぎと平泳ぎでテンポが落ちるところがあり、テンポをあげるよう意識してきたことがうまくいった。パリではメダルを取ることを目標にしている」と話していた。

100m自由形は鈴木が派遣A突破、石浦が派遣B突破

100m自由形S11を泳ぐ石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼) 写真・秋冨哲生

女子100mS11で1:09.68の日本記録を更新し派遣Bを突破した石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼)は、「今大会では3種目とも自己ベストを出すことができ、自由形では日本新記録を出すことができ、確実に泳ぎの技術、レースに向けてのメンタル、どんな状況でもベストを尽くすというパリにむけてのレースになったと思います。全種目とも、まだまだ出だしからのスピードがメダル争いには足りていない。伸び代がある。この後限られたレースのなかでパリの準備をしていきたい」と2日間の感想を語った。また、地元新潟のファンにむけてとマイクを向けられた石浦は、「東京から多くの皆様に応援していただきました。11月に母校で講演させいただいて、その時の子どもたちからメッセージ動画をいただいて、それが今回のパリの選考会の励みになりました。障害があってもパラスポーツをきっかけに共生社会が浸透していけばと思います」と語った。
また、この2日間はかなり緊張したようだったが?とあらためて尋ねると、「ここでのレースを想定し質の高いスピードを意識したトレーニングをしてきた。普段通りにいけば悪いタイムは出ないと自分に言い聞かせてきた。トレーニングの成果が、今回の大変な状況下でも結果につながっていると感じた。本番では高城コーチが(現地へ)これるかわからないが、しっかり準備してタッパーのスタッフと息をあわせていけたらと思っています」と話してくれた。

派遣A・B突破者に続く選考基準は、MQS(パリ派遣標準記録)となる。
MQS突破者は以下のとおり

1日目(3月9日)
由井真緒里(女子200m自由形S5)
田中映伍(男子50mバタフライS5)
齋藤元希(男子400m自由形S13)
木下あいら(女子100m背泳ぎS14)
齋藤正樹(男子100m背泳ぎS14)

2日目(3月10日)
井上舞美(女子100mバタフライS14、200m個人メドレーS14)
齋藤元希(男子100m自由形S13)

2日間のレースが終わり、この結果をもとに選考が行われパリ2024パラリンピック競技大会水泳競技日本代表推薦選手が発表された。

<参考>
1日目の突破速報記事はこちら

(写真取材・秋冨哲生 校正・地主光太郎、久下真以子、そうとめよしえ)

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