1月25日から行われていた「2024ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」は28日、決勝戦を迎えた。今年の大会は、日本(世界ランク3位)、ドイツ(同9位)、ブラジル(同11位)の3ヶ国が登場。予選リーグを全勝で進んだ日本は、最終日の決勝でブラジルと戦い、55−43で完勝した。
ジャパンパラ車いすラグビー競技大会は毎年千葉ポートアリーナにて、海外チームを招いて行われる国際大会。日本と世界の代表のプレーを間近で見られる大会として、2014年から親しまれちょうど10年になる。
今年は日本代表キャプテンの池透暢(3.0/Freedom)やベテランの島川慎一(3.0/BLITZ)を外し、若手主体の選出となった。 ローポインターの乗松聖矢(1.5/Fukuoka DANDELION)がキャプテン、小川仁士(1.0/BLITZ)が副キャプテンを務めるほか、昨年10月の「International Wheelchair Rugby Cup Paris 2023(国際車いすラグビーカップ)」にも選出された23歳の若手、草場隆治(1.0/Fukuoka DANDELION)や29歳の安藤夏輝(0.5/Fukuoka DANDELION)も活躍。ケビン・オアー前HC時代から叫ばれてきた若手の育成については、一歩前に進んだ形だ。
「自分がチームを引っ張る」次世代エース、パリでの誓い
特に最近の成長がめざましいのは、日本を引っ張っていくべき存在とされる21歳の橋本勝也(3.5/TOHOKU STORMERS)。見るたびに大きくなっていく体格に、日頃の鍛錬が見てとれる。 相手からプレッシャーをかけられても颯爽と抜き去っていくスピードに、池崎大輔(3.0/BLITZ)から「走りすぎだ」と指摘を受けたほど。強豪国のハイポインター相手にはスピードだけで抜き去れないシーンも今後出てくる中で、もっと味方を使いながらボールを運んで行けという経験者ならではのアドバイスだ。
橋本は2018年から代表入りしているが、東京パラリンピックでは自分が満足するほどのプレータイムは得られず、悔し涙を流した。
パリに向けては「金メダルを取るためのキープレイヤーになれるようにトレーニングを積んでいく」とまっすぐに先を見据えていた。
「ウカウカしていられない」先輩たちの意地
一方、今回は3ヶ国のみの大会だったため、3位決定戦には日本の「クラブチーム選抜」が登場し、エキシビションマッチとしてドイツと戦った。試合はオーバータイムズ(延長戦)に突入するものの、52−51でわずかにクラブチーム選抜が敗れた。
クラブチーム選抜には、島川のほか、若山英史(1.0/Okinawa Hurricanes)や羽賀理之(2.0/AXE)といった代表経験豊富な選手たちに加え、育成合宿に参加している若手などが選出された。
若山(普段のチーム活動を除くと)2014年のアジアパラ以来10年振りのキャプテンを務めた。若山はロンドンから3大会連続でパラリンピックに出場している39歳で、スピードを武器にローポインターとして日本を支えてきた立役者だ。
1.0は小川や草場などの若い世代も台頭してきており、熾烈な代表争いが予想されるポジション。若山は、「自分はスピードを武器にしてきたが、スピードのある若手も出てきている。その中でも経験や判断力をしっかり出して、パリに向かっていきたい」と気を引き締めた。
岸光太郎HCは「合宿に参加している全員に平等にパリへのチャンスがある」と公言しており、これについて若山は「ベテランへの危機感と、若手へのチャンス、両方のメッセージが込められていると思っている」。
今年のパリはどんなメンバーの布陣になるのか、まだまだ予想がつかない展開になりそうだ。
(取材・ONs Sports 校正・佐々木延江、中村和彦)