チーム・木村は理想の泳ぎへ
50m自由形S11と100mバタフライS11(全盲)に出場した木村敬一(東京ガス)。バタフライのタッピングはオリンピックメダリストの星奈津美コーチが佐賀での日本選手権に引き続き担当した。
「どちらの種目も記録的に満足いかなかったが、課題をもって泳ぐことができた。振り返って次のレースに生かしたい。しっかりと腕の軌道を直している。キックのタイミングを遅らせる取り組みはできている。だいぶ遅かったが」と出場2レースの感想を述べた。
ーー3月の選考会にむけては?
「泳ぎのところは方向性はかわらないが、精度を大幅に上げたい。選考会の時点では(100mバタフライの)この泳ぎで1分1秒台で泳ぎたい」
ーーパリではどんな泳ぎを?
「いままでどおりの泳ぎでは勝てない。大きなイノベーションを起こせるよう準備していきたい」
ーー今日の木村選手の100mバタフライについて、星奈津美コーチは?
星:「私も(タッピングで)緊張していたが、後半の最後15mぐらいきつそうだなと見ていてわかった。今取り組んでいることを意識してやろうとしている。それをレースのスピードのなかで意識をするのは、競技をやっていたものとしてとても難しいのはわかる。
現状でパリで勝つところをめざすとなると、かなり厳しい。今の取り組みを継続しつつ大幅なタイムアップが必要。本来私が携わるきっかけは、フォーム改善。みんなが理想としている(木村の)フォームに近づけること。欲をいうとその理想の泳ぎで勝つことだが、まず理想の泳ぎに近づけたい」
木村:「いまおっしゃってくださったように、これはバタフライをちょっとでも早くしようという企画じゃない。新しい動きを獲得するのがメイン。どれだけパリでやれるか、というのは違う路線。頑張る軸が2つ、いままでは金メダルをとるため技術ではなく体力ベースだった。今回は、体力と技術という2路線でいく」
ーーパラリンピックムーブメントの盛り上げについて富田宇宙選手が「競技以外の方法」ということを言っていましたが、どう思いますか?
「彼はなんか難しいことを言ってましたね。ぼくが一番できるのは絶対に泳ぐこと。パラリンピックムーブメントを広めていくのにいろいろな方法がある。でもやっぱり、現役の選手だからこそできる広め方、世界で戦えているというブランドがあってこそ成り立っているというところもあると思う。それを超えるくらいのムーブメントの広め方というのを宇宙さんが考えているのであれば、それもありだと思う。今のところ僕は思いつかない。泳いでいるなかでできることをやっていくのが一番役に立てる。自分自身も充足感を得られると思う」
上垣匠(強化プログラムリーダー)の談話
年明けのレースは難しい。喝をいれられた結果。しっかり泳いできた結果の選手と、オフを得た選手、それぞれに課題を持てたと思う。
派遣記録の狙いは、Aはメダルをねらい、Bは入賞。派遣記録を切った選手が選ばれる。個人、リレー両方。今日のレースだと、半分くらいしか切れない。世界との差があるクラス、種目は現状の日本の力量ととらえていくしかない。
ーー期待している選手は?
「川渕大耀は、すぐれた水感をもっている。片足とは思えないストロークを繰り出してくれる。近年のパラ水泳のなかでも稀。非常に期待が持てる。体の柔軟性も残された機能をしっかり使いレースができている、研究熱心でもあり、パラのアスリートとして素晴らしい。将来性を感じる」
ーー12月の測定合宿の成果は
「はっきりしたものは出てきていない。目の前の成果だけでなく長いスパンで取り組んでいることもある」
ーー日本のパラ水泳のハイパフォーマンスで足りないところは。
「測定が終わった後に、トレーナー陣とスタッフ陣でディスカッションをする。そこで参考になるデータや資料が少ない。選手の過去の一番の時期との比較でしかない。できればいろんな障害の選手のデータをビッグデータ化して、そこに近づけていくことでレベルが担保していける形をつくっていけたらいいと思う。まだまだこれからの要素は大きい。海外の代表選手団までの調査はできていない。近年水中カメラの性能がよくなって各国水中のデータが取れるようになってきたと思う。それぞれの国の方針とかやり方ってあると思いますが、フィジカルに関して日本はオリンピックからのやり方を下ろしてきてやっている。進んでいるほうだと思う」
ーー東京までと東京後パリに向けて強化は進んだのか。
「進んだ部分と進まなかった部分あると思う。現状維持だと思う」
知的障害と身体障害は、3月のパラリンピックの選考会に向けた最後の公式レースが終わった。大会には300名を超える知的障害のスイマーのほか、ダウン症、身体障害、聴覚障害の合計380名を超えるスイマーが出場した。
(校正・地主光太郎)