成人の日・1月8日、WPS(世界パラ水泳)公認「第7回 日本知的障害者選手権 新春水泳競技大会(日本知的障害者水泳連盟主催)」が千葉県国際水泳場で開催され、知的障害の木下あいら(三菱商事)が400m個人メドレーS14で世界記録(5分12秒78)を樹立。芹澤美希香(宮前ドルフィン)が200m平泳ぎS14でアジア記録(2分50秒59)を、50m背泳ぎで日本記録(33秒37)を樹立したほか、日本記録3、大会記録16が更新された。
木下あいら、400m個人メドレーで世界記録
木下は、22年9月に3年ぶりに有観客で開催されたジャパンパラ水泳競技大会に現れた新星。昨年3月シンガポールでの海外遠征に初参加、8月には世界選手権に出場し200m個人メドレーでトップに迫る泳ぎで銀メダルを獲得。10月のアジアパラでは200mの自由形と個人メドレーで2つの金メダル、混合4×100mリレーでアジア記録に貢献し飛躍の1年を突き進んだ。400m個人メドレーはパラリンピックの種目ではないが、狙っていた世界記録をみごとに樹立した。
「ふだん泳がない種目に出てみたかった。パラリンピックでは半分の距離(200m)になるので頑張れそうです。いまは背泳ぎのフォーム改善をしています。まだ筋力がたりなかったり、練習もできていないところがあります。パリへ出れるのが確定したら、全力で泳げるように頑張ります」と木下は語る。今年はいよいよパリパラリンピックに向かう。
山口尚秀は平泳ぎ50mと100m2つの大会記録更新。2度目のパラリンピックへワクワク
2019年ロンドンの世界選手権100m平泳ぎS14で世界記録をマークして以来、自身の記録を更新し続ける世界王者・山口尚秀(四国ガス)。昨年8月マンチェスターでの世界選手権でも金メダルを獲得し、早くもパリパラリンピック出場が内定した。アジアパラでは個人種目とリレーのアジア記録で4冠。11月のマンチェスターで行われたイギリス代表選手団との合宿にも参加し、帰国後、代表合宿、山梨学院大学での練習と忙しくも充実した日々を送った。
「午前中の50m平泳ぎはよい泳ぎができた。100m平泳ぎは、一時期、瞬発系の泳ぎで水をつかむ感覚が落ちていたが英国合宿で瞬発力を鍛えるトレーニングができ復活してきたと感じた」と山口の調子は上向き。
ーー有観客のパラリンピックは初めてですが、楽しみですか?
「パリ2024の公式SNSに、開催イメージを伝える映像があり、パレード式の開会式で、観客も参加していたり、凱旋門やエッフェル塔の近くを通っていた。ヨーロッパをはじめとした多くの人が注目していて、大会規模の大きさを感じ興奮します。そういう中で変わらずベストを尽くしたいという気持ちです」と記者の質問に応えた。
芹澤美希香、木下の存在とても感じる
2019年の世界選手権、2021年東京パラリンピックと100m平泳ぎS14をメインとしてきた芹澤が、この日は200m平泳ぎS14でアジア記録(2分50秒59)、50m背泳ぎで日本記録(33秒37)を樹立した。200m個人メドレーSM14でも自己ベストを更新した。
「今日は全(3)種目ベストだったのでとても嬉しい。手と足のタイミングあわせを全種目で意識して練習してうまくいっている。100分の1秒でも早く、いまの自分を超えられるよう練習をがんばりたい」
ーーなぜ背泳ぎを?
「ちがう種目も泳いでみたくて、平泳ぎの次に得意な種目を泳ぎました」
ーー木下さんの存在は刺激になっていますか?
「とても存在を感じます」
ーーそれで背泳ぎを?
「背泳ぎは、(木下に)勝てないので、自分の記録を超えられるようにと思って出ています」
谷口由美子(日本知的障害者水泳連盟協会委員)の談話
「パラリンピックの年ということもあって、新記録も多く、みんな頑張りました。パラ種目ではないですが、泳力レベルを更新できてよかった。木下は200m個人メドレーが得意種目でそれよりも長い距離で世界新が出せ、持久力含め4泳法それぞれレベルアップしたのかと思う。芹澤は、自分のものにするのに時間がかかる選手。海外でなかなか記録が出せなかったが、アジア大会でおそらく初めて自己ベストが出せて、自信がついて、自分の泳ぎのなかで表現ができるようになった。
山口は50mも28秒台を狙っていたと思うが、ここのところ遠征続きで疲労もあったと思う。まだまだこれから3月にむけて、パリに向けてあげていくでしょう」
ーー山口選手がイギリス留学した意図は?
「世界の選手にあこがれるのではなく、自分が世界にいるのが当たり前になってほしい。通常の遠征ではプールとホテルを行き来するだけだが、海外の生活や文化を味わう、ブリティッシュスイミングと練習するのも目的だが、これまでとちがった経験をして人間として成長してほしいと考えた」