12月17日(日)フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)にてLIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2023 第3節が開催された。第2節で暫定首位に立ったfree bird mejirodaiがbuen cambio yokohamaを5-0で下し通算3勝0敗で優勝した。以下、去年の覇者埼玉T.Wingsが2勝1敗、パペレシアル品川が1勝2敗、buen cambio yokohama が3敗という順で今年のトップリーグは終了した。
得点王はmejirodaiの園部優月(3得点)が初の獲得。最優秀選手賞にはmejirodaiの永盛楓人が、こつこつとチームに最も貢献した選手に贈られるTANAKA Great Effort Awardは同じくmejirodaiの泉健也(GK)が選出された。
試合は、埼玉対品川、yokohama対mejirodaiの順で行われた。
埼玉T.Wings vs. パペレシアル品川
二週間前の日本選手権準決勝と同じ対戦となった埼玉対品川の勝負、第二戦の結果次第では優勝の可能性が残っている両者にとって負けられない一戦であった。両者の対戦は、去年のLIGA.iでは埼玉が2-1で勝利。その後の20回日本選手権準々決勝と、今年の21回日本選手権準決勝では品川が勝利している。
第1ピリオド5分に、埼玉の山中優汰が左サイドをドリブルで持ち上がり、左45度からゴール右にシュートし先制点を決める。自身、LIGA.i初のゴールだ。森田翼、井上流衣が埼玉ゴールに迫るシーンもあったが、通常はフィクソの寺西一をピヴォに、フィクソに笛木翔太を置く布陣がうまく機能せず品川の攻めに迫力が生まれず、1−0と埼玉リードで折り返す。
品川は第2ピリオドから川村怜をピッチに投入し、フォーメーションを変更する。ただ、いつものように自陣奥から持ち上がって、左右にパスを配給する動きができず、なかなか攻めの形に繋がらない。一方で埼玉は10分に菊島宙が、GKと1対1を作って至近距離から強烈なシュートを決めて2-0とリードを広げる。なんとか川村、森田、井上らがドリブルでシュートまで持ち込もうとするが、埼玉はフィクソの高畑翔や、山中、キャプテンの加藤健人、菊島が比較的自陣の高い位置で彼らをブロックし決定的な仕事をさせずそのまま2-1で終了。埼玉が勝って2勝1敗とし去年の覇者の意地をみせた。「森田翼と川村怜に集中してマークした」ことが功を奏したと埼玉の菊島充監督は語った。
buen cambio yokohama vs. free bird mejirodai
mejirodaiにとっては並々ならぬ気持ちで迎えたこの一年だった。2021年度にKPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権2022カップ優勝と日本選手権で初優勝を遂げて迎えた22年度だったが、LIGA.iで埼玉に敗れて2位、日本選手権は準決勝で品川に敗れて3位とどの大会も優勝できないまま終わった。
「その悔しさをバネに、我々がトップであることをみせつける気持ちで戦った」と、山本夏幹監督が試合後に語った。
第1ピリオドの開始2分、自陣でボールを奪った鳥居が、そのまま左サイドをドリブルで持ち上がり「中が空いているのが分かる分かったのでギアをあげた」とカットインからゴール右にシュート、先制点を決める。その後、mejirodaiは北郷宗大、園部優月、永盛楓人と隙あればそれぞれがドリブルで持ち上がりシュートを放つ。それをフィクソの位置に構えるyokohamaの齊藤悠希が追加点を許さず試合は進む。第1ピリオド残り2分を切ったところで、FKからのパスを受けた園部が左サイドからカットイン、ペナルティーエリア外からはなったシュートがゴール左にきまった。これがmejirodaiの2点目となり、そのまま第1ピリオドを終える。
2-0となり「リスクを取らない方向(監督談)」で試合を進めようとするmejirodaiは第2ピリオド開始1分でフリーキックを得る。これをまたも鳥居がペナルティーエリア外のセンターやや右からシュートを放ちゴール。試合を決定づける。その後5分に園部が、14分には永盛がシュートを決めて5−0とyokohamaを突き放す。残り30秒を切ったところで、自陣に残る永盛と鳥居がパス交換を行ったり、鳥居がドリブルで自陣内でボールをキープするなどのテクニックをみせてそのまま試合終了となった。
「勝ち切ることを中心」にした監督采配と、「ボールと人の連動を体現する(mejirodaiらしい)ゲームでお客様に楽しんでもらう」(キャプテンの鳥居健人談)というエンターテイメント性が合致した、mejirodaiの完勝であった。
「相撲」をテーマに会場を盛り上げる
今節の隅田会場は、相撲部屋が多く存在する相撲の街ということで、相撲の取り組みをイメージしたポスターや幟、ちゃんこのキッチンカーなどが会場の雰囲気を盛りあげた。また、押尾川部屋の力士も来場し、会場の盛り上げに一役買っていた。前売り600枚ほどが開場に前に完売。去年の入場者数に対しても25%増の505名が来場された。
LIGA.iの「i」には競技性(”I”ntensity)、興行性(”I”nfluence )、組織性(”I”ntegrity)の三つが込められている。改めて松崎英吾専務理事に2年目を終えての感想を聞いた。「競技性については代表のスケジュールに引っ張られるという状況にあるものの、新しい選手が登場し、手の内を知り尽くしている相手に対して、作戦を立てて試合に臨むことが競技力向上に寄与している」と分析した。「入れ替え、新しいチームの加入、そこが協会としての次のチャレンジだ」と語った。鳥居もインタビューで新しいチームの加入、拡大に向けての努力を口にしていた。
一方、興行性については「まだまだ」と語った。確かに、品川会場は、去年の606名に対して849名の来場。隅田会場も去年を大きく上回る観客が来場した。しかし、リピーターを増やしていくことに対しては道半ばであると感じているようだった。
もっとも、今までのブラインドサッカーではあまり見られなかった、時間を使い相手にボールを渡さない、自陣でのパス回しに対して驚きの声があがったように、観客の競技を理解し楽しむ能力もあがりつつあるようにも感じる。
会場では中川英治男子代表監督からパリパラリンピック出場への報告もあった。来年のパラリンピック参加をうまく活用して、LIGA.iのそしてブラインドサッカーのさらなる飛躍に繋なげてもらいたい。
LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2023
最終順位
優勝 free bird mejirodai 3勝0敗
2位 埼玉T.Wings 2勝1敗
3位 パペレシアル品川 1勝2敗
4位 buen cambio yokohama 3敗
(写真協力・日本ブラインドサッカー協会、取材協力・星野恭子 校正・中村和彦、そうとめよしえ、佐々木延江)