アクサブレイブカップブラインドサッカー日本選手権 準決勝ラウンドが、12月3日(日)サーラグリーンフィールド(浜北平口サッカー場)(静岡県浜松市)で開催された。八王子会場、名古屋会場それぞれの予選ラウンドを勝ち抜いた10チームで争われた。組み合わせは抽選で決められ、5チームづつA,B二つのグループに分かれてそれぞれ決勝進出チームと3位決定戦進出チームを決める。
Aグループは以下の5チームでトーナメントが行われた。
埼玉T.Wings(予選ラウンド グループD1位/以下同じ)
パペレシアル品川(グループC1位)
buen cambio yokohama(グループE1位)
ソイエ葛飾(グループD2位)
大阪ダイバンズ(グループA2位)
Bグループでは以下のチームでトーナメントを戦った。
Avanzareつくば(グループE3位/2位の兵庫サムライスターズ辞退で繰り上がり)
ナマーラ北海道(グループB2位)
たまハッサーズ(グループB1位)
free bird mejirodai(グループA1位)
新潟フェニックスファイヤーズ(グループC2位)
3月9日のFINALラウンドには決勝戦がパペレシアル品川 vs free bird mejirodai。3位決定戦が埼玉T.Wings vs Avanzareつくばとなった。
今回Aピッチでおこなわれたゲーム(上記トーナメント図の*)は日本ブラインドサッカー協会のYoutubeチャネルよりライブでストリーミングされた。この記事ではストリームされなかった前回優勝のパペレシアル品川の試合および、古豪Avanzareつくばにフォーカスを当てる。
パペレシアル品川(Aグループ)
品川はチームとしての攻撃のパターンがしっかりと確立されつつある。左右のアラである森田翼(背番号20)と井上流衣(背番号2)が相手サイドのアタッキングサード内で両サイドに張り、自陣ペナルティーエリア付近まで下がってGKのスローインを受けた川村怜(背番号5)がドリブルで持ち込んで森田、井上のどちらかにパス、パスをうけたほうがカットインしてシュート。または川村が自ら持ち込みシュートが攻撃の形だ。去年は川村からのパスを受け損なうことが多かったが、今回はパスがつながりシステマチックな攻撃を何度もみせた。初戦のyokohama戦では第1ピリオド10分、第2ピリオド2分に川村が自ら持ち上がりゴールを決めた。第2ピリオド残り1分を切ったところ森田が右側からファーサイドに入るシュートを決めてyokohamaに3-0で勝利した。
品川の次の相手は埼玉だ。埼玉には圧倒的な得点力を誇る菊島宙が右サイドにいる。その埼玉に対して品川は別の攻め方を見せる。右サイドの井上を自陣に引いて菊島をケアし、左サイドの森田がキックオフから積極的にしかける。開始3分に森田はゴール前の混戦からゴール右に押し込み先制する。同11分には井上がPKを獲得。自ら決めて2−0とする。守っては川村が自陣で菊島に決定的な仕事させない。
失点も、第2ピリオド7分右コーナーキックから加藤健人(背番号10)が自ら持ちこみファーに決めた1点に抑えて、品川が2-1で勝利した。品川の小島雄登監督も「森田は最後のフィニッシュの精度、パワーが上がった」と語る。厚くなった攻撃パターンが二連覇のかかる決勝でどう発揮されるか楽しみだ。
Avanzareつくば(Bグループ)
過去に5回の優勝を誇るつくばも予選を突破したのは3大会振りだ。予選ラウンドはPK戦を制してグループE3位。兵庫の辞退をうけての準決勝ラウンド進出だ。準決勝ラウンド初戦の相手は北海道。第1ピリオド14分にアブディン モハメド(背番号9)がドリブルで右サイドを駆け上がりシュート。ファーのサイドネットに突き刺さり先制。その直後に北海道の戸谷隆之介(背番号9)がキックオフからドリブルで運びそのままゴールで同点。1-1で第1ピリオドを終える。
第2ピリオド7分に戸谷がPKを決めて北海道が2-1と逆転する。その後もつくば陣内の左サイドに張った戸谷がドリブルからシュートを放つがつくばに弾かれる。一方のつくばは13分にペナルティーエリア外、右45度の位置でフリーキックを得る。これをアブディンがまたしてもゴール左に直接決めて同点に追いつき、2-2で第2ピリオド終了。つくばにとっては予選ラウンドに引き続いてのPK戦となった。これもアブディンが決めPK戦(3人制)を1−0で北海道を下す。
つくばの次の相手は前回準優勝のたまハッサーズだ。第1ピリオド5分、たまのミスをついて前線に張ったアブディンが決めてつくばが1-0と先行。この後、アブディンがフィクソに下がり、工藤綾乃(背番号2)、星野友洋(背番号6)とコンパクトな逆三角形を作ってたまの攻撃を押し返す。彼らがシュートコースを限定することでGK松井康(背番号16)が最後にシュートを弾き返す。
第2ピリオド2分に阿部良平(背番号8)にゴールを決められるが、「相手の体に当たっての守備」(篠田竜輝談)を徹底して防ぎ切る。残り1分切ったときに、篠田が自陣でボールを奪いそのまま持ち上がってシュート。自身公式戦初のゴールで土壇場でたまから再度リードを奪いそのまま試合終了。2-1でつくばがたまを下した。
3試合目はfree bird mejirodaiが相手だ。登録選手が5名しかいないつくばはそれまでの2試合をメンバー交代なしで戦った。その疲れのなか、第1ピリオドはなんとか2点失点に抑えるが、第2ピリオドに5点を失い、0-7で敗れ3位決定戦に回ることなった。選手集め、練習が思うようにできなかったというつくばも、3点(除くPK戦)を決めたアブディンも代表強化指定の、工藤も女子代表経験があり、GKの松井はトレーナーとして現日本代表に参加している。3位決定戦で古豪復活となるか、興味は尽きない。
今回の準決勝ラウンドは前回大会に引き続き浜松市の共催で開催された。運営には地元関係団体により浜松ブラサカサポートグループが運営協議団体として立ち上げられた。また、同時に浜松市ははままつインクルーシブスポーツフェスティバルを隣接するサーラグリーンフィールドスポーツ広場その他で実施した。そういった努力もあったが、集客は683名で前回の905名には及ばなかった。前回は、目標の1.5倍の集客があったとも聞くので、この数字が現実的なのかもしれない。パリパラリンピック出場を集客に生かすには時間がなかったが今後の展開を見守りたい。
FINALラウンドは、2024年3月9日(土)に前回と同じ町田市立総合体育館(東京都町田市)にて開催される。「厳しい相手ではあるが、最高の舞台で最高の相手とできることを楽しみたい」(品川 小島監督)「チャレンジャー精神をもってチーム一丸で戦う」(mejirodai 山本夏幹監督)と抱負を語る。3位決定戦では埼玉とつくばが対戦する。こちらも見逃せない戦いだ。FINALラウンドは全席有料でチケットは来月発売予定。パリパラリンピックの代表強化指定選手も多く出場するFINALラウンド。是非、その眼で試合を観ていただきたい。
準決勝ラウンド終了時点での得点ランキング
11点 菊島宙 (埼玉T.Wings)
9点 鳥居健人(free bird mejirodai)
7点 高橋裕人(大阪ダイバンズ)
6点 川村怜 (パペレシアル品川)
4点 園部優月(free bird mejirodai)
4点 北郷宗大(free bird mejirodai)
4点 高畑翔 (埼玉T.Wings)
4点 山中優汰(埼玉T.Wings)
4点 黒田智成(たまハッサーズ)
4点 林健太 (A-pfeile広島BFC)
お詫び:予選の得点ランキングにおいて高橋裕人選手の成績が抜けておりました。大変申し訳ありませんでした。以後注意いたします。
(写真協力・鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会 校正・中村和彦、そうとめよしえ)