世界のトップ選手たちが集まりナンバーワンを競う「IBSA柔道グランプリ2023東京大会」(東京体育館)が12月4日開幕。2日間にわたって熱戦が繰り広げられる。
グランプリ大会は、パラリンピック・世界選手権に次ぐ大きな大会で、東アジアでの開催は初。パリパラリンピック出場に向けたランキングポイントの対象となるもので、約40ヶ国から200人の選手が集まっている。
12月2日・3日に行われていた「柔道グランドスラム東京」(東京体育館)とのジョイント開催で、オリ・パラの垣根を超えた柔道の発展とレベルの向上が期待されている。
クラス分けで「全盲(J1)」と「弱視(J2)」に
これまでパラ柔道は障害の程度は関係なく、体重別によってのみ行われていた。しかし、「見える選手と見えない選手が戦うのは本当に公平なのか?」という理由から、2022年に視力の程度によるクラス分けが行われることになった。
ロンドン・リオ・東京と3大会のパラリンピックに出場している半谷静香(J1/女子48kg級)。前日の記者会見では「見えないクラスで戦うというのは自分にとっては優位になる。今までは”見えなくてもできる”というのを見せたかったが、今大会は見えない選手同士の戦いの中でどう勝っていくか」と話していた。
今日は決勝で惜しくもKhusan Kyzy Khaiitkhon(カザフスタン)にゴールデンスコア(延長戦)で一本をとられ、銀メダルを獲得した。
「(見えないクラスで)勝てると思って練習してきたので、ただひたすら悔しい。全盲のクラスができたことは追い風ではあるが、見えない選手と戦うことについては、相手が力で押して来たり、独特の動きをしてきたりすることもあるので、克服していきたい」と今後の課題を口にした。
男子73kg級の全盲クラス(J1)では、アテネパラリンピックで初出場銀メダルの実績のある加藤裕司が3位決定戦に登場し、勝利。銅メダルを獲得した。「弱視の選手とやると、どうしても技の多さや反応の速さで勝てないことがあった。見えない選手同士で戦えるようになったのはかなりよかった」と話した。
全盲の選手にとっては、クラス改正は追い風だ。
しかし、これまでパラリンピックで実績を残してきた廣瀬悠(男子90kg級/弱視)など障害の程度が軽い選手が、今回のクラス分けによってパラリンピック出場の対象から外れたケースもあるだけに、「平等」と「競技の発展」のバランスの難しさを感じざるを得ない。
体重の階級統合で苦しんだ選手も
視力によるクラス分けの他、体重の階級も昨年見直された。
▼男子は60kg級・66kg級・73kg級・81kg級・90kg級・100kg級・100kg超級の7階級だったものが、60kg級・73kg級・90kg級・90kg超級の4階級に
▼女子は48kg級・52kg級・57kg級・63kg級・70kg級・70kg超級の6階級だったものが、48kg級・57kg級・70kg級・70kg超級の4階級に
統合があった分、元のクラスから体重を増やしたり減らしたりして対応しなければならない選手は当然多くなる。
先の加藤は「全盲クラスができたのはよかったが、もともと81kg級の選手なので、減量が毎回苦しい」と苦笑い。
また、東京パラリンピック男子66kg級銅メダリストの瀬戸勇次郎(J2)は、階級を73kgに上げているが、体格の大きい選手に対して苦戦を強いられていた。
今日は初戦で、東京パラリンピックの男子73kg級金メダリストのSayidov Feruz(ウズベキスタン)と対戦し、序盤で技ありを奪われたものの、合わせ技で逆転勝ち。
決勝では、Orazalyuly Olzhas(カザフスタン)と対戦し、相手の反則負けで勝って金メダルを獲得した。
「なかなか勝てない試合が続き、階級の統合は逆風だと感じていた。今日の優勝は自信になった。技術は今の階級でも通用するところはあると思っていたが、81kg級から来た選手もいる中で、とにかくフィジカルを強化してきた。自国開催だから勝てた、ということにならないように、これからも成績を残していきたい」と意気込みを口にした。
それぞれが複雑な思いを抱えながらも、壁を乗り越えてパリへ向かう。
(校正・そうとめよしえ、地主光太郎)