10月24日、11時52分、HSCスタジアムで車いす陸上・1500メートルT54決勝に日本から44歳のベテラン樋口政幸(千葉県・プーマジャパン)が出場。2分53秒20の自己ベストで走り終えた。結果は7位だった。
「速い!ついていくので精一杯でした」とミックスゾーンで樋口は開口一番にいう。
昨日2組に分かれて行われた予選から勝ち上がってメダルを獲得したのは、タイの42歳・ワホラム・プラワット(2分51秒03)で、もう一人のタイ人、そして中国の26歳、胡陽らだった。アジア記録(2分43秒67)をもつクウェートの25歳・アラジェヒ・ファイサルは今回5位だった。
スタートから先頭集団がハイレベルにレースを展開し、そのスピードのままフィニッシュ。2014年(仁川)の大会記録(3分06秒52)を大きく上回るハイペースなレースは、ほぼパラリンピックと同レベルといってもいいレースに違いなかった。
「最初から最後までハイペースだったので、記録はけっこう良い。(自分の)記録は自己ベストだった。ただ、パリの派遣標準には遠い。このままでは出られないし、まあどの道勝負にならない」と樋口は話す。
中長距離種目では、昨日の5000メートルT54決勝にも出場した樋口。こちらはトップとの差が0.6秒というなかでの5位で、メダルは逃したが、十分に戦えるという手応えがあったという。
「かなり競り合えての5位だったので、1500も行きたかったですけど、短い距離になると、やはりこんなものですね。あらためて強いなと思いました。僕のアジアパラは終わりました。あとは後輩の応援をしたい」という樋口。
去る9月の大会で樋口は「行けても行けなくてもパリへの挑戦が最後」と話しており、その機会を伺っているようだった。しかし、この大会で走ってみて樋口の心が動いたように見えた。
「雰囲気がね、すごく良いです。2010年の広州アジアパラを思い出しました。すごく歓迎してくれてるのがわかる。ボランティアの方たちもみんな笑顔で挨拶してくれ親切です。まあ、教育と言って仕舞えばそれだけなんですけど、でもそれだけじゃない何か暖かさを感じます。国同士はいろいろあるかもしれないけど、中国が好きになりましたよ」と、試合に集中できた日々を振り返った。
選手村では、住環境がとてもよく、選手はシングルルームで、各部屋に洗濯機があり好きな時に洗濯ができたり、シャワーや浴室暖房などもあるそうだ。
「住環境もすごくいい。こんな楽な遠征は初めてだ。トラックもすごく走りやすく、ここでタイムアタックしたらいい記録出るかなって想像した」と、杭州での大会の雰囲気やサポートが樋口の心を前に向かせていた。
「迷っていたが、来て良かった。神戸(来年5月の世界選手権)は目指します。パリは、やれるだけやってみます」と口にし、アジアでのレースを楽しんでベテランは会場を後にした。
(編集協力・中村和彦、そうとめよしえ)