パラスポーツフォーラム2023が8月25日、三菱商事ビルディングで開催された。パラアスリートをシンボルにした、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)にむけた大手企業社の結束。これが、東京パラのレガシーの一つといえる。
東京2020にむけて、アスリート雇用を通じてパラアスリートを支援し、JPSAへのスポンサーなどでパラスポーツを応援してきた企業が、来年のパリパラリンピックにむけて、ふたたび、手を携えた。
登壇したのは、パリを目指す5人のアスリート。木村 敬一(東京ガス)・今井 友明(三菱商事)・佐藤 友祈(モリサワ)・井内 菜津美(みずほフィナンシャルグループ)・兎澤 朋美(富士通)。それぞれの所属企業でDE&Iの取り組みや目指す社会づくりをともにする仲間である。5人のアスリートはトークセッションでメンタルマネージメントやコミュニケーション、所属企業との関わり方について答えてくれた。
日々のサポートや熱いエールを送ってくれる仲間たちが一堂に会する場で、パラアスリートが日頃の練習や思いを伝えるファンサービスのようなイベントであった。
木村敬一/東京ガス
木村は1つの大会で複数種目にエントリーして出場することが多い。そのメンタルマネージメントについて「1レース泳ぐだけで疲労は大きい。次の日のレースまでに回復させなければならない。水泳は4つ泳ぎ方があり、距離も色々あるので、練習では気分転換になる。バタフライの調子が悪くても自由形の調子が良ければその日は良かったなとか、自由形が悪くなってきたらバタフライに戻るとかそういう相互作用がある。泳ぎ方を組み合わせて練習し、レースで発揮することができるようにしています。
とはいえ、疲労との付き合い方は大変。長距離種目から短距離種目など神経伝達の所で難しいところは、コンディションの維持やメンテナンスを専門のスタッフと一緒に調整していく必要がある。一人で泳ぐが多くの人と一緒にレースを作っています」とチームワークについて語った。
今井友明/三菱商事
今井は、チームワークコミュニケーションについて「とても大事、コート上4人で戦う競技だが、ベンチからの声掛けも大事で選手12人がコートやベンチで戦い支え合っている。ベンチのスタッフの他に、コートの外から応援しているスタッフもいる。医療系のスタッフもいて体のケアをしながらサポートしてくれている人もいる。海外だと通訳も必要、映像分析のアナリストもいるので試合の直後に復習できる環境まで整っている。それで選手個人個人は試合に臨むだけでいいという環境が整っていて、競技に集中できている」と語った。
佐藤友祈/モリサワ
「東京パラ前にプロに転向してモリサワに所属している。大会やレース、イベント、講演会などで、実際に交流をすることによって、その方達がスタンドで応援してくれていると、それがパワーになってトラックレースでも発揮できている。競技は孤独で一人でやっている感じだが、実際そういう応援声援があって、東京パラが実施され、無観客の中でも、ボランティアやスタッフ、選手たちが進路を変えずにしっかり突き進むとができ、自分の金メダルにも繋がった。所属スポンサーの応援があって競技ができていると感じている」とサポートに対する感謝を口にした。
井内菜津美/みずほフィナンシャルグループ
井内はガイドランナーとのコミュニケーションについて「ブラインドマラソンは伴走者も含めて3人で走るチームスポーツ。フルマラソンは20キロで伴走者が交代。その時3人が繋がる瞬間があるが、伝えられることは少ない。それまでにしっかり作戦を立てて、どういうペースで走るとか、他の選手との駆け引きはどうするとか、細かく決めて、みんなで相談する。作戦がハマった時は順位も良いし結果もついてくる。伴走者は試合の時の2人だけではなく、日々いろんなスタッフに関わってもらって競技をしている。結果が出た時はたくさんの人が喜んでくれるので、原動力となっている」という。
兎澤朋美/富士通
兎澤は「富士通では主要大会があると応援企画をしてくれる。コロナ禍になってからライブ配信を大会側が提供することが多くなってきたので、それを上手く活用して社内でzoomに繋いで観戦。現地に応援にきて頂ける方だけでなくハイブリッドという形で応援してもらっている。試合後に交流して、実際に応援の声が聞けるというのも嬉しい。応援のグッズのうちわやタオルなどを作って持ってきてくれる。パラスポーツではまだそんなに多くはないので、恥ずかしい部分もあるが嬉しさの方がそれにまさる。所属社員の方と、他愛も無い話ができたり、深く関われることも自分の力になっていると感じる」と所属社員との交流や日々の会社生活が大切であることを語った。
基調講演の後の囲み取材で、木村は、パラアスリートが共生社会や障害のある人のシンボルとなっていることについて、「確かにそういう役割は生まれている。ただ、障害のある人といってもいろいろだ。障害の種類だけでなく、人間としてのパーソナリティもいろいろ違う。共生社会へのあり方を自分たち自身も学ばなければいけない。学びながら、この役割に取り組んでいく」と、役割についての認織を語っていた。
パラアスリートへのサポートは選手だけでなく、所属社員にとっても良い影響をもたらすに違いない。パラスポーツの交流会などが各地に広がっていくことを願ってやまない。
(校正・佐々木延江)