「バーミンガム2023 ブラインドサッカー男子世界選手権」最終日。日本は8月23日にフランスを今大会初の複数得点2−0で下し、イランと5位決定戦を争うことになった。パリパラリンピックの出場権をかけて参加した日本にとってこの試合に勝てばパラパンアメリカン競技大会2023の結果次第でパリパラの出場権を獲得できる。中川英治監督の「みっともない戦い方をしても出場権を得て帰る」ために負けられない試合だった。
第1ピリオド早々に、日本はフィールドプレーヤー4人がミドルサードに詰める、かなりラインをあげた攻撃的なフォーメーションでイランに攻め込む。2枚が攻めれば、2枚が守り、単独で攻め込むイランに対して素早い攻撃から守備への切り替えをみせ、時には4人でチェックにいってイランに決定的な仕事をさせない。9分、11分、12分とイランがゴール前まで迫ったがゴールキーパー佐藤大介がしっかりブロックして得点を防ぎ0−0で折り返す。
第2ピリオド、イランは変わらず単独で攻め込んでくるが日本は集中力高くしっかり押さえ込む。4分、日本はペナルティーエリア外1メートルでフリーキックを得る。イランの4枚の壁の前に、後藤将起と平林太一が立つ。ゴールキーパーは右側のファーポスト寄りに立つ。佐々木がちょんと出したボールを川村怜キャプテンが右にドリブルすると、後藤とともに壁2枚がつられて右に動き隙間ができる。その隙間を通して川村がゴールマウス左隅にシュートを蹴り込みゴール!、フランス戦に続きこの大会2点目。そして今大会初めて見せるセットプレーからの鮮やかなキャプテンのゴールで日本が先制した。
この後、イランはこれまでの単独での攻めに加え、2人目、3人目がフォローに入るが、日本は集中力を切らさず押し返した。残り6分で平林に替えて田中章仁をいれて、相手の厚い攻めにもコンパクトな守備でしっかり凌ぐ。残り1分イランは4人で攻めてくるが、後藤、田中が前からプレッシャーを与えてイランに決定的な仕事をさせない。そして、タイムアップ。1-0で日本の勝利。
中川英治監督と川村キャプテンがフェンス越しに抱き合って泣く。田中がゴールキーパー佐藤を抱き抱える、中国に負けた時にはグッと悔しさを噛み締めていた後藤が、咆哮する。ピッチは日本の歓喜につつまれた。中川監督が信頼する「這い上がってきた選手・スタッフ」が、最後にパリパラリンピックを引き寄せた。
日本のパリパラリンピック出場は、早ければ11月23日パラパンアメリカン競技大会2023の準決勝戦で決まる。ここで、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアのどれか2カ国が勝ち残れば、繰り上げで日本がパリパラの出場権を獲得する。過去3回の決勝戦はいずれもアルゼンチンとブラジルの対戦だ。我々はこの日を楽しみに待ちたいと思う。そして心の底から「パリパラ出場おめでとう」と日本代表を祝いたい。
なお、本大会の最終順位と個人賞は以下の通り。
1位:アルゼンチン 2位:中国、3位:ブラジル、4位:コロンビア、5位:日本、
6位:イラン、7位:フランス、8位:イタリア、9位:タイ、10位:モロッコ、
11位:ドイツ、12位:スペイン、13位:イングランド、14位:メキシコ、15位:トルコ、16位:マリ(※大会不参加のため全て不戦敗)
ベストGK:HUACHU XU(中国)
得点王:Paul Iyobo(イタリア)7得点
MVP:Maximiliano Espinillo(アルゼンチン)
フェアプレー賞:タイ代表
(校正・中村和彦、佐々木延江、そうとめよしえ)