「憧れるのをやめ、全力で戦った」ロービジョンフットサル日本代表は、地元イングランドをぎりぎりのところまで追いつめた。
IBSA2023ロービジョンフットサル世界選手権準決勝(現地時間8月21日)の対戦相手は開催国のイングランド。
そのイングランドは、ピヴォのDouglas Pratt(背番号6)やフィクソのHarry Gibbons(背番号4)を中心に、グループステージを2勝1分10得点で勝ち上がってきていた。
対する日本のスタート1stセットはピヴォに岡晃貴、フィクソにはトルコ戦で2得点の赤崎蛍、アラには竹内雄亮と篠瀬翔平、GKゴレイロにはトルコ戦で再三の好守をみせた加渡主悟が入った。
最初のチャンスはイングランド、今大会10得点中6ゴールを決めているDouglas Prattがゴール前のこぼれ球に詰めるがGK加渡がおさえる。3分には、クロスに詰めたDouglas Prattのシュートも加渡が読み切って得点を許さない。
このエースをどう抑えるかが一つのポイントになっていたが、フィクソの赤崎や大平英一郎が自由にさせない。赤崎はマイボールになるとたっぷりと間をとり、逆にPrattに1対1をしかけ相手をいらつかせた。
そして先制点を決めたのは日本。第1ピリオド8分、右サイドキックインからの竹内のクロスに、岡晃貴がファーで合わせゴールネットを揺らした。
しかし第1ピリオド残り1分を切ったところで、Harry Macdonaldが巧みなトラップで赤崎をかわしてゴールを決め、同点に追いつかれる。
第2ピリオドに入り、日本はGK加渡の好守や、選手たちの激しいディフェンスで追加点を許さず、攻めては赤崎のシュート、コーナーキックからの岡のシュートなど、イングランドゴールを脅かす。
しかし2点目を奪ったのはイングランド、残り6分となったところで攻守の要Harry Gibbonsがゴールネットを揺らした。その直後、日本はパワープレーに出るが、大平のパワープレー返しを止めたプレーにイエローカードが出て、いったん解除。
残り時間の少なくなるなか、残り3分、赤崎蛍が右サイドのキックインから起死回生の同点ゴールを決める。第1戦でも痛めた腰を強打する場面もあったが、赤崎の2試合連続、今大会3点目のゴールとなり、地元実況アナウンサーに「スーパースター」とまで言わしめた。
日本はその後のイングランドの猛攻を凌ぎきり、勝負はPK戦へと持ち越された。
先攻は日本。角谷佳祐、赤崎、岡、大平が次々とゴールネットを揺らす。
イングランドのキッカー3人目からはGK加渡に代わり細谷篤史が入り、その細谷がイングランド4人目のPKを見事に止め、日本は王手をかける。
しかし日本は決めきれず、6人目までもつれ込んだPK戦をイングランドが制して決勝進出を決め、日本は3位決定戦に回ることとなった。
イングランドの監督を務めるのは自身もロービジョンフットサルの選手として143試合に出場し活躍したSteve Daley。かつては日本の選手、例えば前キャプテンの岩田朋之にとって、イングランド代表のキャプテンSteveは憧れの存在だった。
だがこの準決勝では「憧れるのをやめる。そして、全力で戦う」決意で臨み、同じ土俵でがっぷり四つに組んで戦うことができた。
直前合宿で大平英一郎が「世界レベルは見えてきた。やっと近づけた。戦えるくらいにはなってきた実感はある」と語った言葉も、選手たちが実戦の場で証明してくれた。
だがPK戦とは言え、勝利の結果を得ることはできなかった。
「感謝の気持ちを結果で返す」「とにかく結果にこだわる大会」と、選手や監督は常々言い続けてきた。
だとすればこの試合に手応えを感じこそすれ、満足はしていないだろう。
その飢餓感を満たすのは3位という結果でしかないはずだ。
3位決定戦は今夜(22日)23時キックオフ。相手はスペイン。
<参考>
ロービジョンフットサルの特徴や各選手の見え方等は、以下の記事を参照。
https://www.paraphoto.org/?p=36888
(校正・佐々木延江、そうとめよしえ)