関連カテゴリ: サッカー, ブラインドサッカー, ブラインドスポーツ, 国内大会, 夏季競技, 山口, 観戦レポート — 公開: 2023年5月19日 at 3:08 PM — 更新: 2023年5月19日 at 3:30 PM

ブラインドサッカー地域リーグ2023が山口で開幕。A-pfeile広島BFCが1位に!

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ブラインドサッカーの浸透を図ることを目的とする地域リーグが開幕しA-pfeile広島BFCが1位となった。初の山口での大会は地元チームが途中棄権となるも、ボランティアで参加していた学校のサッカー部のサポートにより期せずして「混じり合う社会」を垣間見る大会となった。

最多ゴール5点を決めたA-pfeile広島 矢次祐汰(背番号6)がシュートを放つ/ 筆者撮影

 ブラインドサッカーの裾野を広げることを主な目的とした地域リーグ2023が、5月14日(日)周防大島町陸上競技場(山口県大島郡)で開幕した。全国を北日本、東日本、中日本、西日本の4ブロックに分け、1日開催で通常は4チーム、会場によっては10チームが参加し、その日の参加チームでトーナメント戦を行う。順位はその会場単位で確定し、特に他の大会や会場の結果とは連携しない。23年5月から24年3月まで、山口会場を皮切りに全国計8会場にて合計26チームが参加する。成田会場ではロービジョンフットサルの地域リーグも同時開催され2チームが参加予定である。

広告の入っていないサイドフェンスが設置されたコート
まだスポンサー広告の入っていないサイドフェンスと、ブラインドサッカー専用ゴールマウス / 筆者撮影

 今回は山口県で初の公式戦開催となった。この背景には、2020年に発足したゲートウェイやまぐちが中心となって、大島町および山口県障害者スポーツ協会の協力のもと、中国・四国地方で初めてブラインドサッカー用のサイドフェンス、ゴールマウス(フットサルゴールより縦5cm,横50cm大きい)を準備したことがある。ブラインドサッカーの重要な要素であるサイドフェンスを常時使用して練習できる場所は少ない。常設は全国で二箇所のみ(MARUIブラサカ!パーク(東京都小平市)、ダイセル播磨光都サッカー場(兵庫県赤穂郡))。その他の会場では畳んで保管されているため、設置するのに時間がかかる。サイドフェンスを使ってプレーできることも地域リーグにとっての魅力のひとつである。

シュートを打つ兵庫 竹内真子(背番号9)/筆者撮影

 今回の大会は、ゲートウェイやまぐち(山口県)、兵庫サムライスターズ(兵庫県)、 A-pfeile広島BFC(広島県)、 LEO STYLE北九州(福岡県)が参加してのトーナメントだった。結果は下図の通りA-pfeile広島BFCが1位。以下、兵庫サムライスターズ、LEO STYLE北九州、ゲートウェイやまぐちの順となった。広島の矢次祐汰(背番号6)が2試合合計で最多の5点、次いで兵庫の竹内真子(背番号9)が3点を記録した。

当日の組合せと結果

 今回は注目すべきは、会場設営、大会運営として参加した大島商船高等専門学校サッカー部の4年生、5年生と顧問の幸田三広教授だろう。ゲートウェイやまぐちにガイドとして参加した幸田教授は初戦の兵庫戦で選手が負傷退場したため、3位決定戦ではフィールドプレーヤとしてぶっつけ本番でブラインドサッカーをプレーした。第1ピリオドが終わった時点でやまぐちの弱視の選手がプレー続行不可能となった。競技規定上ゴールキーパーを含め1チーム4名で試合は成立する。ただしその3名のフィールドプレーヤーのうち、最低1名が視覚障害者(弱視でも可)でなければならないとする地域リーグの大会規定がある。やまぐちは、視覚障害者の参加者がいなくなったため、公式戦としてはその時点で成立しなくなった。
 第2ピリオドは審判の提案により練習試合扱いとなった。フィールドプレーヤーが3名のやまぐちには大島商専サッカー部の4年生川本太智(晴眼者)さんが立候補し参加した。彼も初めての経験である。プレーの感想を聞くと「怖かったが、周りのチームメイトの声援で怖さを乗り越えてプレーできた」と語った。彼が入ってからやまぐちの攻撃が活性化した。

 試合終了後に幸田教授は「本当に怖かった。特にぶつかられるのが怖く、どういった姿勢をとるべきか悩んだ。ボールの音は聞こえるが、フェンス含めて方向もわからず、敵味方の声を聞き分けられなかった。徐々に自分からキーパーに声をかけ、その声を聞いて方向を把握できるようになった。プレーしてみて相手の立場に立った具体的な指示が必要であることを痛感した。ブラインドサッカーがコミュニケーション力の育成にもってこいのツールだと感じた。授業、部活に取り入れたい。うちのチームは選手間で喋らない選手が多いので、選手に経験させることで、サッカーもより強くなると思う」と語ってくれた。

急遽参加の川本さんが北九州 高見澤信彦(背番号9)とボールを競い合う/筆者撮影

 ゲートウェイやまぐちの尾崎達也代表は、「ブラインドサッカーの魅力は、健常者も障害者も、ともに混じり合ってプレーするところにある」と語った。IBSA公式試合では、全盲から光覚までの視覚障害者のみがフィールドプレーヤーとして競技する。晴眼者と視覚障害者が一緒にプレーするのは日本独自のルールで、視覚障害者(弱視を含む)のフィールドプレーが1名でもいれば地域リーグの公式戦として成立する(国内最高峰のトーナメントである日本選手権、トップリーグのLIGA.iは2名以上の視覚障害者の参加が義務付けられている)。視覚障害者の参加の場を確保しつつ、晴眼者と混じり合うように設計されていることがポイントである。様々なプレーヤーが一緒にプレーするためにはお互いが相手の立場に立って具体的に指示を出し、声かけによるコミュニケーションが必要となる。「混じり合う社会」の姿を、この大会に参加することで強くイメージできたのではないだろうか。

 次は、5月21日(日)しながわ中央公園(東京都品川区)にて、ファンタス千葉SSC 松戸ウォーリアーズ/free bird mejirodai/パペレシアル品川/ソイエ葛飾による東日本リーグが開催される。是非多くの人が会場に足を運んで実際に「混じり合う社会」の姿に触れ、魅力を感じて欲しい。

本記事は、一度公開いたしましたが、ゲートウェイやまぐちの3位決定戦における途中棄権の理由に、二つの誤りがありました。試合を成立させるためのキーパーを含むフィールド上の最低人数が5名であるという誤り(実際はキーパー含めて4名がプレーできれば試合は成立する)。視覚障害者(全盲または弱視)が1チーム1名以上参加しなければいけないという地域リーグの規定を理解していなかった点です。この再掲記事は、これらの点を訂正し、確認の上、加筆・修正したものです。

(校正・中村和彦、佐々木延江、そうとめよしえ)

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