関連カテゴリ: イベント, コラム, 体験会, 取材者の視点, 周辺事情, 夏季競技, 新着, 東京, 東京パラムーブメント, 義足アスリート, 車いすバスケットボール, 陸上 — 公開: 2022年12月12日 at 8:10 PM — 更新: 2022年12月31日 at 4:56 PM

Tokyo2020 パラリンピックのレガシーから生まれた第一歩「レガシーコンテンツ体験会」に参加して

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東京2020パラリンピックのレガシーを掲げてレガシーコンテンツコンソーシアムが結成。「義足陸上競技」「ソーシャルサーカス」「車いすバスケット」のプログラムが一堂に会した「レガシーコンテンツ体験会」が豊洲の地で開催された。

 Tokyo2020パラリンピックのレガシーのひとつ、新豊洲Brilliaランニングスタジアム(東京都江東区)で行われた「レガシーコンテンツ体験会(以下レガコン)」に参加した。それは、障害のある人の身体の動きを体験し、多様性ある未来の社会を垣間見たり、「公平性」とは何かを考える時間となった。

新豊洲Brilliaランニングスタジアムで行われた「レガシーコンテンツ体験会」開会式

 12月3日(土)第1回レガコンは、この会場を利用する3つの団体、Xiborg(代表 遠藤謙)、認定NPO団体スローレーベル(理事長 栗栖良依)、一般社団法人パラ神奈川SC(代表 西村元樹)が結成するレガシーコンテンツコンソーシアムによって開催された。約60名の参加者が集まり、20名ほどのチームに分かれ順番に「ユニバーサル・ラン(スポーツ用義足体験)」「ソーシャルサーカス」「車いすバスケ」のコンテンツを1時間ずつ体験する。筆者も参加者として体験してみた。

体験用義足で歩く筆者(右)と伴走する眞野雄輝選手(古賀オール)

 「スポーツ用義足体験」では、切断部分の異なる2人のパラアスリートから「スポーツ用義足」のレクチャーを受け、健常者の体験用にアタッチメントがつけられたスポーツ用義足を体験した。また、陸上競技における障害の度合いに応じた「クラス分け」についての説明をうけた上で、実際にあった校内マラソン大会の事例(障害のある参加者の順位が別枠で設定された)を取り上げ、スポーツにおける公正性について参加者間でディスカッションをした。

通常の義足(地面に横たわっているもの)とスポーツ用義足(右足で支えているもの)の違いとその装着方法を説明する眞野雄輝選手(古賀オール)
陸上のクラス分けについて説明する(左から)佐藤圭太選手(トヨタ自動車)と遠藤代表

「ソーシャルサーカス」とは、サーカスの技を身につけるための身体訓練や道具を使った練習を通じて、協調性・問題解決力・自尊心・コミュニケーション力などを総合的に育むスローレーベルのプログラムだ。参加者は実際に自らの身体とボールなどの小道具を活用し、トレーナーから出される6つの課題をチームで解決する。

「車いすバスケ体験」は、競技に使う車いすで移動、シュート、試合形式などを体験する。障害の違いをポイント化してチームを作る「ポイント制」についてや、通常のバスケとのルールの違いを学んだうえで実際にチームに分かれて3クォーター制の試合形式を体験した。

車いすバスケにはTokyo2020 銀メダリストの鳥海連志選手(WOWOW)も講師として参加

 参加した障害のないほとんどの人にとって義足も車いすバスケも初めての経験である。スポーツ用義足を両足につけてまっすぐに立とうとすると、最初は立てない。すぐにバランスを崩す。少し膝をまげて股関節を意識して立つとスムースに動けるようになった。日頃、何気なく行っている立つ、歩くという動作が様々な身体機能のバランスによって成り立っていることを実感する。

車いすバスケット体験を終えた主催者と参加者たち

 バスケット競技用車いすでまっすぐに漕ぎ進むのも難しい。左右同じタイミング、力で車輪を回さないとどちらかにそれていく。また、シュートを打つ時、日頃膝の弾力性に頼っていることを実感する。たとえば、ゴールリングの高さは通常の305㎝ではなく体験用に230cmに下げられているものの、座った状態でリングの高さを超えるシュートを打つのに一苦労する。ゲームが始まると、思ったように車いすをコントロールすることは難しい。相手をブロックしようとすると、頭では届くと思っても腰から下は車いすに固定されているから伸びが届かない。足を使ってプレーするバスケの身体の動きとは全く違うものが求められることを痛感した。

「ソーシャルサーカス」の課題。参加者間で声を掛けながら人間知恵の輪を解決中

 ソーシャルサーカスでは義足の方、車いすの方なども共に同じように課題に参加した。積極的な対話を促し、相手との違いを引き出すプログラムとなっている。例えば、「人間知恵の輪」は参加者同士がチームでランダムに手をつなぎ、絡まった状態から声を掛け合い一つずつ解いていく課題である。相手が無理な体勢にならずに自分がどう動いたら解けるか、対話をしつつ相手の身体の動きへの理解が必要であることに気づかされる。

クロージングで話すパラ神奈川SCの西村代表

 すべての体験が終わり、クロージングでパラ神奈川SCの西村代表が語った通り、パラアスリートにとってパラスポーツは「普通のスポーツ」だ。3つのコンテンツを通して、障害のある人の普通がみんなの普通になり、世界が塗り変えられる、そんな可能性を感じられた。

義足体験を主催した遠藤代表とソーシャルサーカスの栗栖代表

 レガシーコンテンツコンソーシアムでは、それぞれの団体によるプログラムに加えて、今回のような合同での体験会を今後も開催していく予定である。遠藤代表によれば「(新しい、より幅広い層に体験してもらう意味も含めて)小学生とその親御さんにもっと参加してもらいたい」とのことだ。これまで企業研修が主だったが、学校の授業などに広げていけたらと考えている。学校関係者の方など興味があれば是非、コンソーシアムにコンタクトしてほしい。そして、多様性ある社会に興味ある方はぜひ、次のレガコンを体験してみてほしい。

(写真・編集 佐々木延江)

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